雪の日舎
わくわく発見記

「デザインはおまかせします」信頼されているからこそ、チャレンジしたい〜デザイナー 藤木勉さん

2019.05.27

現在スノーデイズファームで販売中の「越後杉箸」。

 

ECショップに掲載するにあたって、販売者であり、プロデューサーのR4Yours代表・桑原亮さんに商品のことやつくりはじめるきっかけについてお話を聞かせていただきました。

 

桑原さん、実は本業は寿司職人。

津南町にある「松海寿司」を経営しています。

 

そんな桑原さんが繋ぎたかった、ちいさな町の魅力を詰め込んだのが、「越後杉箸」です。

 

 

R4Yours とは

「民間の活力・実益こそが真の地方活性化に繋がる」と考え、民間の民間による民間の為の仕事作り、そのプロダクトとセラーの企画と具現化を目指す会社。
様々なジャンルの人間を結び付け、その能力を最大限に活かし、森林山地の環境保全、地域所得向上、地域にもっと貢献したいと考えてる方々(継続支援型施設の利用者・主婦・高齢者)との協業、特産品開発、次世代への地場産業作り、この5点を結びつけた「地域循環型ビジネス」を実現・推進することで「真の地方活性化とは何か」を考えることを目的としている。

R4Yours オフィシャルサイトより抜粋)

 

 

 

「僕には何もできません。関わっていただいている皆さんが、本当に素晴らしいんです。僕の力ではなく、おかげさまなんです」

 

お話の中で何度も何度も、そう語る桑原さん。

 

そんなふうに絶賛する皆さんが、どんな方なのか、どのように仕事をされているのか、とても気になってきます。

 

同時に、桑原さんから溢れ出るこの「わくわく感」の答えが、みなさんにお会いすることで見つかるのではないかという期待とともに、それぞれお話を聞かせていただくことになりました。

「なぜ寿司職人が、お箸で起業?」越後杉箸から始まる地域循環型ビジネス〜R4Yours 桑原亮さん/新潟県津南町

 

「ここでも夢は見れる」勇気をくれる越後杉箸〜デザイナー・Biko 滝沢萌子さん

 

「こんな働き方もアリなんだ」好きを仕事に〜ハンドメイド作家 花羽呼屋 石原綾乃さん

3人目は、デザイナーの藤木勉さん。

越後杉箸のパンフレットやオフィシャルサイトのデザイン、催事で使うPOPデザインなどを担当しています。

 

 

 

 

 

嬉しくて、楽しくて、仕方ない

 

藤木さんが越後杉箸に関わり始めたのは前職場で働いていた頃。当時のことを振り返り、こう話していました。

 

「桑原さんが話を聞きたいということで会社に来て、俺が会ったんです。津南の木をつかった事業をするんだというお話でした。

実はその頃、俺もちょうど家をリフォームしていて薪ストーブを導入していたんですね。また、実家も木材屋だったので、もともと木が好きだったんです。

だから、桑原さんのお話を聞いたとき、面白そうだなって思いました。是非関わりたいなと」

 

 

実際に販売が始まると、想像以上の反響がありました。それを目の当たりにした藤木さんは、越後杉箸に関わる前後で、ある気持ちの変化もあったと言います。

 

「地元・津南町のことを誇りに思ってきました。本当に地元を大事にされている事業なので、うれしいです。

最初は夢物語みたいだったんですけど、こうして現実味を帯びてくると、関わっているのが嬉しくて楽しくて、仕方ないんです。自分の成長にもなるので、嬉しいですね。チャレンジさせてもらえるので」

 

 

 

チャレンジできる場所

 

そう生き生きと話す藤木さん。

実は今年の7月に、フランス・パリで行われる「Japan Expo」(*1)に越後杉箸が登場。そのステージのバックパネルを作っていると教えてくれました。

さらには現在、動画も製作中とのこと。デザインに留まらず、幅広くチャレンジをしています。

「動画制作はほぼ初めてのことなので、ビクビクしてます。でも楽しみです」

 

と同時にこんな話も……

「桑原さんはデザインや企画ついては、ほぼ丸投げなんですよ。『おまかせします』って感じなんですよね。だからこそ、自分で一から考えて挑戦させてもらえるのは、怖くもあり、嬉しくもあります」

 

藤木さんはじめ、関わる皆さんも桑原さんのスタンスについて、同じように話していました。

「おまかせします」というのは、信頼がなければできないこと。

その信頼を糧に、それぞれがドキドキワクワクしながらチャレンジできるのだなと感じます。

 

 

(*1)Japan Expo とは、日本と日本文化に恋する人たちが一堂に会す祭典。マンガ、武道、ビデオゲーム、民芸、J-POPから伝統音楽まで、様々な日本を丸ごと体感できる。現在は、日本のコンテンツや文化と関係のあるヨーロッパや日本の企業のビジネスプラットフォームにもなっている。

 

これからの働き方の可能性

また、そういった企画から実際のデザインまで一通りを任せられる仕事について、こうも話してくれました。

 

「今回、様々な人が関わって一つの商品が出来上がったのを目の当たりにして、デザイナーの働き方としても新しい視点ができました。デザイナーも独立したり、会社に入っていても仲間をつくって協業したり、コミュニティを広げていくことが必要なんだろうなって。

もちろん会社名が売れるのもいいですけど、個々のデザイナーが売れることで会社も売れるという流れに、これからはなっていくんだろうなと思っています。

デザイナー一人ひとりの得意な分野を明確にしていって、できない部分は仲間に頼むというようなディレクション的なものも、デザイナーには必要になってくるんじゃないかなって。

今回も、箸袋やロゴデザインは滝沢さんが担当していたり、POPやサイトデザインは僕だったり、そういうことですよね」

 

同業者も、競い合うのではなく、それぞれの得意分野を生かして協業することで、互いの刺激にもなる。これからはもっと、新しいつながりでの、ワクワクが生まれてくる予感がします。

 

 

触れにくいものに触れ、見えてきたこと

最後に地元・津南町についての思いをお聞きしました。

「まだ埋もれている、PRできるものがあるなと今回携わって思いました。今までは、嫌な部分しか見えなかったんでしょうね。触れにくかったものに触れてみると、意外とすんなり馴染めるというか、可能性がたくさんあることに気づきました」

 

さらに身近な反応ほど、うれしいとも話してくれました。

「小さいことなんですけど、仲間に『いいね』って言われた時が一番嬉しいですね。知っている人から『あれ良かったよ』って言われることが何より嬉しいです」

 

そう話す藤木さん、7月にパリで行われるJapan Expoへ持っていくバックパネルは杉林に太陽の光が差し込む、幻想的な写真を使用しています。

「杉林の雰囲気と日本の神秘的な部分も表現できたらなって思って作ったんです。これは、龍ヶ窪で撮った写真です。実家の近くなんですよ」

実は私自身も津南町に引っ越してきて、大好きになった場所の一つが龍ヶ窪でした。ただ藤木さんから見せていただいた杉林の写真が、まさか龍ヶ窪だとは思わず、びっくり。

 

地元で育っているからこそ、無意識的に心に残っている風景。それは地元の力を最大限に詰め込んだこの越後杉箸のデザインを考えるとき、自然と浮かんでくる風景なのかもしれません。

 

この写真はきっと、藤木さんでなければ撮れなかった一枚なのだと思います。

▲龍ヶ窪(新潟県津南町)

保環境庁の「全国名水百選」に選ばれた湧水で形成された池。1日約43,000tの水が湧き出ており、1日1回池全体の水が入れ替わる。

 

「自分の地元のことが、客観的に見えるようになりましたね」

 

 

この杉林の写真を見ていると、差し込む太陽の光がなんだかR4Yoursのロゴにも見えてくるような気がしました。

 

そんなこのロゴも藤木さんのデザイン。

「R4Yoursは新しい風を吹かせてくれると思って、風車をイメージして作ったんです。まわっていってほしいなという思いを込めて」

 

 

「桑原さんは、何考えてるかよくわからないです(笑)頭の中どうなっているんだろう?きっと楽しいことでいっぱいなんでしょうね。ワクワクするきっかけを与えてくれる人です」

 

藤木さんのお話から、桑原さん自身から溢れ出す「ワクワク感」が周りにも波紋を広げ、ワクワクが伝染していっていることをひしひしと感じました。

 

そんな藤木さんが撮った写真は、私たち津南町民に「いつもここにある風景」を改めて見つめなおすきっかけを与えてくれました。

 

藤木さん、ありがとうございました。

 

 

お話を聞いた人

藤木勉

新潟県津南町出身。雑誌の編集の仕事を目指し勉強する中で、デザインの道に進むようになる。現在は地元の印刷会社にてデザイナーとして働く。デザインや動画は独学で、経験を積んでいる。

 

 

■藤木さんが関わる越後杉箸はこちら

諸岡 江美子

諸岡 江美子

スノーデイズファーム(株)webディレクター/保育アドバイザー。1987年、千葉県船橋市生まれ。東京都内の認可保育園にて5年間勤務、その後新潟県妙高市にある国際自然環境アウトドア専門学校、自然保育専攻に社会人入学。津南町地域おこし協力隊を経て、現在はClassic Labとして独立。雪国の「あるもの、生かす」という生き方を研究している。編集者、エッセイスト。