第2話 雪の日舎が実現したい、未来のはなし
2017.09.29
日本の農村を未来に。
農園に集まった異業種6名チームで行う、未来への挑戦。
中山間地域の農村・農業をつなげるために、私たちが具体的にどんなことをしようと思っているのか、どんな未来を描いているのか、お話しさせていただきます。ぜひ、コーヒー片手に聞いてくださいね。
限界集落ではない。きぼうしゅうらくとの出逢い。
まずは雪の日舎が生まれるまでのお話です。
私と集落との出逢いは2004年に発生した中越地震の復興ボランティアでした。村は当時6軒13人の限界集落、冬は多いときで3~4m近く雪の積もる豪雪地でした。
でも行ってみると限界集落ではありませんでした。「集落を存続させたい。自分たちが限界集落から脱して、日本中の過疎地を元気づけたい」。そして村がひとつになり、一生懸命船をこいでいたのです。その姿は、限界集落ではなく、きぼうしゅうらくでした。
それ以来、通うようになると、村の人たちは一緒に農作業をするなかで、農業がうむ生き方や文化、自身の哲学を教えてくれました。それは不安と変化の時代にぶれない、確かな生き方でした。こんな大人になりたい。彼らが未来を信じて繋ごうとするものを絶やしたくない。
そして私は移住を決意し、大学を卒業してゼロから農業を始めました。
中山間地域で農業をするなかで目の当たりにした、農村・農業の課題
しかし、中山間地域で私自身農業をするなかで、農村・農業の課題に直面します。
①高齢化、後継者不足であること
②価値観の都市化
③社会全体の縮小によって、需要の低下、業界を超えた担い手不足
私たちがくらし、働くこの地域は、大好きな場所でありながら、社会のあらがいようのない変化とともに、課題に向き合う課題先進地でもあります。待ったなしの日々に、焦りを感じる日々です。
一方、移住女子としての活動で出逢った、都市の女性たちの悩み
私だけが農業してもだめだと、2013年からは農村に移住した女性たちと「移住女子」として里山のリアルを発信するフリーペーパー「ChuClu」を発刊し、都市と農村をつなげる活動も始まりました。
2015年からは「にいがたイナカレッジ」さんで全国移住女子サミットも東京で毎年開催し、生き方の選択肢としての地方を提案し続けてきました。
その中でたくさんの女性の話を聞いていると、彼女たちの悩みにも気づきました。
①東日本大震災以降、安心安全な食と子育てを求め、お金があっても得られないものがある都市での生活に不安を抱いていたこと
②長時間労働をはじめ、仕事と子育ての両立に苦しみ、都市での生活に無理を感じていたこと
このように、里山での農業と、都市の女性の課題に向き合うなかで、双方が同じことを言っていることに気づきました。
それは両方とも「はぐくむ不安」をよく語ってくれるのです。
もしかしたら「農業×保育」でなにかが解決できるかもしれない。
そんな小さなアイデアから始まり、
はぐくみびとに寄り添い、農村の未来を育てようと、「雪の日舎」を立ち上げました。
「しごと・くらし・こそだて」を地続きにすることが鍵なのでは
どうやったら、私たちの暮らすこの地域を、
こどもたちに繋ぐことができるだろうか。
問題を解決するための蛇口を探すなかで気づいたことは、
高度経済成長以降の、農村から都市へと人口が流出するなかで、
「しごと・くらし・こそだて」が分断していったことに問題意識を抱きました。
けれど、かつて農村はこれらが地続きでした。
これらを地続きにすることが重要なのでは。
私たちは、それを「農村まるごとようちえん」をコンセプトに実施しようと思いました。
私たちが実現したい、未来。すべての人が安心のなかで、くらし・こども・作物をはぐくむことができる世界を
実際に農村に住んでいると、
こどもをはぐくんでいる人、
作物をはぐくんでいる人、
そんな「はぐくみびと」たちが元気だと、こどもも地域も元気です。
はぐくむこと、そのものは、元来とても人をしあわせにするものでした。
しかし「ひとりで頑張らねば」「こうあらねば」と苦しんでいる女性や農家はたくさんいます。
「こどもひとり育てるには、むら一つ必要」というアフリカのことわざがあるように、私自身、出産し子育てするなかで、「ここは皆が親で地域自体が保育園のようなもんだ」と話す村の人たちに救われています。
この場所はずっと、くらしや、こどもや、作物のしあわせなはぐくみのフィールドだったのです。日本中にしあわせにはぐくむことができる居場所ができれば、居心地のいい社会の空気が作られるはずです。
そして、しあわせそうな親をみて、こどもは安心感を抱きます。
しあわせな、はぐくみの連鎖
そして里山にはまた、こどもたちの声が戻り、しあわせなはぐくみの中で見守ってくれる居場所や親のような存在を日本中にもつ、こどもたち。
こどもたちが、この場所で、たくさんの見守りのなかで恐れずあゆみ、たくさんのたからものを見つけ、しあわせなはぐくみに出逢い、次は誰かの人生を見守ることができる存在となる。そんな、しあわせなはぐくみの連鎖によって、農村が未来につながる世界を目指しています。
そんな素敵な未来を、私たちは夢を語れるこの小さな農村から作っていきたいと思います。
次回からは、雪の日舎に携わるメンバーそれぞれの、今にいたるまでのはぐくみの日々のお話しをさせていただきます。
佐藤 可奈子
株式会社雪の日舎 代表。1987年、香川県高松市生まれ。立教大学法学部政治学科卒。大学卒業後、新潟県十日町市に移住、就農。「里山農業からこころ動く世界を」がテーマ。著書「きぼうしゅうらく〜 移住女子と里山ぐらし」
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