地域の方に支えられた妊娠期間 妊婦編#3
2020.01.06
豪雪地・津南と豪雪地・妙高
どちらかを選ばなきゃいけないなんて、つまらない。
どちらも選びたいから、行ったり来たりする。
「二拠点居住」というライフスタイルへの憧れでもなく
ただただ、自分たちのしたい生き方を選びとってきた結果。
それが私たちの行ったり来たり婚です。
前回、地域の方が草刈りや畑の耕運を手伝ってくれたと書きました。
本当に地域の方たちには、いろいろなところで手を貸してもらったり、声をかけてもらったりして、妊娠期間を元気に過ごすことができたのはみなさんのおかげだと思っています。
感謝しかないです。
地域の作業、どうする?
普通は、安定期に入る5ヶ月ごろから周囲には報告すると思うのですが、わたしの場合は妊娠が発覚した3ヶ月ごろには、地域の方にはすでに伝えていました。
というのも、地域には道普請(みちぶしん)という共同作業があります。
水路の掃除だったり、草刈りだったりの重労働です。
私たちは津南と妙高にそれぞれ拠点を持っているので、夫は妙高で作業に出ますし、私は津南では世帯主になるので、私が毎回作業に出ていました。
さすがに妊娠してからは、できる作業とできない作業があります。
特に刈り払い機を使った作業はできません。
都合が合えば夫に出てもらおうとは話していましたが、前述の通り夫も自分の地域の作業や行事もあるので、なかなか難しかったのです。
多かれ少なかれ迷惑をかけてしまうことには変わりないので、早々に区長さんはじめ集落の皆さんには報告をすることにしました。
その結果、区長さんの配慮で草刈りのときは、公民館の掃除を割り当ててもらったり、負担のないように配慮してもらいました。
同時に、皆さんからは
「おめでとう」
「この集落に子どもが生まれるなんて、何年ぶりだよ」
「こんなことになるなんて、想像できなかったね」
と、喜んでもらって……
それがなによりも嬉しかったです。
また、地域というのは狭いもので、うちの集落に報告したことで、あっという間に隣の集落にも話は広がっていました(笑)
なので、外で作業していれば
「体調大丈夫?」
「畑なんてやって大丈夫か?」
「草は伸びても死なないんだから。おなかの子の方が大事だよ」
「なんかあったらいつでも言ってね」
と声をかけてもらったり……
道端でお母さんたちに会えば
「おなか大きくなってきたね」
「産まれたら、みんなで抱っこしてあげるからね」
「先輩がいっぱいいるから大丈夫だよ」
とおなかを触ってくれたり……
妊娠してからは、夫と離れて一人で暮らしていることが、少し心細く感じるときもありましたが、こんなふうに地域の皆さんに見守っていてもらえるというのは、とても心強かったです。
地域の方への後ろめたさ
とはいえ、自分の家の草刈りや畑、田んぼだけでも大変なのに、うちの草刈りや畑まで気にしてもらうのは、実際はとてもとても申し訳なく、
「こんなに迷惑をかけてまで、暮らしていていいのだろうか」
と後ろめたくなる気持ちも正直ありました。
感謝の気持ちを伝えたり、モノでお返しすることはできるけれど、それもまた何か返ってきたり(田舎あるある)
「そんなつもりでやったんじゃない」
と言われたり……
一体どうしたらこの借りを返せるのだろう?
と思っていました。
ただ純粋に、子どもが生まれることを楽しみにしてくれている地域の人たちを見ているうちに、
いますぐは返せなくても、いつかまた私が動けるようになったとき、皆さんが動けなくなるようなことがあったときは、私が草刈りしに行こう。
そのために、今はしっかりおなかの子を育てて、
「こんなにみんなに望まれて助けてもらってあなたは生まれてくるんだよ」
とたくさん伝えてあげよう。
そう思うようにしました。
近くにいても、離れていても
また、離れた妙高からも、ときどき美味しいものが届いたり、メッセージが届くことがありました。
妊娠してからというものの、妙高に出かけることも減ってしまい、ご無沙汰してしまった方々も多いのですが、夫だけではなく、私のことも気にしてくださっていることが本当にうれしかったです。
津南にも、妙高にも、こんなふうに見守り支えてくださる方がいるからこそ、私たちの行ったり来たり婚は成立しています。
こんないいところ、やっぱりどっちかなんて選べないでしょう?
この子を産んで、津南と妙高に帰る日が今から楽しみでなりません^^
■行ったり来たり婚の津南拠点「Classic Lab 柳の家」
家主が出産・育児のため、2019年12月〜休業中。Classic Labのブログは随時更新しています。
■行ったり来たり婚の妙高拠点「こつぼねの家」
現在改修中。2020年8月オープンを目指して「古民家ぐらしであそび、つながる家」として準備中。
諸岡 江美子
スノーデイズファーム(株)webディレクター/保育アドバイザー。1987年、千葉県船橋市生まれ。東京都内の認可保育園にて5年間勤務、その後新潟県妙高市にある国際自然環境アウトドア専門学校、自然保育専攻に社会人入学。津南町地域おこし協力隊を経て、現在はClassic Labとして独立。雪国の「あるもの、生かす」という生き方を研究している。編集者、エッセイスト。