雪の日舎
行ったり来たり婚

自分とは別の人格を持った命を授かるということ 妊婦編#2

2019.12.27

豪雪地・津南と豪雪地・妙高
どちらかを選ばなきゃいけないなんて、つまらない。
どちらも選びたいから、行ったり来たりする。
「二拠点居住」というライフスタイルへの憧れでもなく

ただただ、自分たちのしたい生き方を選びとってきた結果。
それが私たちの行ったり来たり婚です。

 

 

妊娠は病気じゃない。何をどこまでやっていいの?

柳の家から見た畑

さて、いよいよ始まった行ったり来たりのマタニティライフ。

 

とは言っても、わたしの場合、つわりがとても軽かったため、初期はおなかに赤ちゃんがいるという実感はほとんどありませんでした。

 

唯一、健診に行ってエコー映像を見たり、心拍を聞いて実感するくらい。

 

つわりが重い方は本当に辛いと聞くので、わたしは本当にラッキーだったのですが、その分動けてしまうので、妊婦といえどもどこまで動いていいのか、どこからはやってはいけないのかがわかりませんでした。

「妊娠は病気ではない」ともよく言われるので、「体を大事に」と言われても、実際にどう過ごしたらいいのかなぁ?と。

 

産婦人科では、

「重いものを持ったり、背伸びするような動作はしないでください。お腹に力を入れるようなことはだめです」

とは言われていたものの、まだおなかも大きくないし、日常生活でそれらの動作をしないって、なかなか難しいぞ……と。

しかもすぐに夫にやってもらえるような環境ではないので、なおさら。

玉ねぎの収穫

▲ちょうど玉ねぎの収穫の時期でした。

この頃、1番ネックだったのが草刈り。

そう、夏に向けてグングン伸びてくる草たち……

しかも今年は古いカーペットや畳で覆われていた家の裏の畑を整備しようと、春先に不要なものを撤去していたところでした。

 

よっしゃー!草刈りガンガンやるぞー!

と張り切っていたのもつかの間……

 

刈り払い機、さすがに使わない方がいいのだろうか……

 

一応説明書には「妊婦の使用はしないでください」との表記。

産婦人科で聞くと、「慣れていれば使ってもいいけど……代わってもらえる人がいるならしないに越したことはないですね」

 

う〜ん、判断に迷う……

 

ということで、身近でママ農家!と言えば、うちの代表がいるじゃないか!と、佐藤に相談……

 

その結果「さすがに刈り払い機は使わないようにしてたよ」ということで、農家でさえ使わないんだから、やめようと決めました。

 

決めてしまえば、あとはできることをするだけ!

このときからわたしの相棒は鎌に。

(初期はおなかも大きくなかったので、かがんで手刈りがまだできました)

 

また、妊娠してからというものの、今までよりも夫が気にかけて津南に来てくれる頻度も多くなり、その度に草刈りはじめ、作業を手伝ってもらいました。

夫、草刈りする

さらに、わたしがちまちま手刈りしているのを見かねて、近所の方々が草刈りを手伝ってくれたり、畑を耕運してくれたり……本当に助かりました(泣)

 

刈り払い機で刈ると、本当にあっという間にきれいになっていって、自分が手刈りしていた時間はなんだったんだろう……とむなしくもなりました(笑)

 

機械って素晴らしいですね……!

 

そんなこんなで、実感のないなりに、新しい命を授かった身として、ちゃんと考えて行動しなければという気持ちも少しずつ芽生え始めました。

 

 

自分の中にいる、別の人格を持った命

 

違う人格を持った命のイラスト

わたしにとって、自分の体の中に別の人格の命があるということは、本当に不思議なことでした。

 

今まで一人の体であれば、少しくらい無理して動いたっていいし、食べ物だってこだわらなくてもよかったのですが、実感がないとはいえ、確実にわたしのおなかの中には違う人格を持った赤ちゃんがいるんだと思うと、適当にはできないなぁと思うようになりました。

 

人間、自分のためというのは限界があるのでしょうね。

大事な誰かのためには頑張れるし、我慢もできる。

ときには、あきらめることもできるのかもしれません。

 

わたしは今まで、特に津南に来てからや結婚してからは、「自分自身が心地よい状態」でいることが最優先でした。

 

それは、自分自身がしあわせでなければ、まわりには何もできないと思っていたから。

 

もちろんいまもその根本の考えは変わってはいませんが、自分とは別に優先したい存在ができるということは、わたしにとって新しい感情でした。

 

自分よりも大事な存在ができるっていうのは、こういうことなのかな。

 

いまだに、おなかの中にいる赤ちゃんの存在は「かわいい」というより、「不思議」な感情の方が大きいですが、こうやって一心同体で過ごす十月十日がそういう自分を育ててくれるのかもしれません。

 

 

 

 

■行ったり来たり婚の津南拠点「Classic Lab 柳の家」

家主が出産・育児のため、2019年12月〜休業中。Classic Labのブログは随時更新しています。

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諸岡 江美子

諸岡 江美子

スノーデイズファーム(株)webディレクター/保育アドバイザー。1987年、千葉県船橋市生まれ。東京都内の認可保育園にて5年間勤務、その後新潟県妙高市にある国際自然環境アウトドア専門学校、自然保育専攻に社会人入学。津南町地域おこし協力隊を経て、現在はClassic Labとして独立。雪国の「あるもの、生かす」という生き方を研究している。編集者、エッセイスト。