目に見えないものに祈る、子どもと女性へのまなざし〜「産神様」妙高市小局 妊婦編#8
2020.01.24
豪雪地・津南と豪雪地・妙高
どちらかを選ばなきゃいけないなんて、つまらない。
どちらも選びたいから、行ったり来たりする。
「二拠点居住」というライフスタイルへの憧れでもなく
ただただ、自分たちのしたい生き方を選びとってきた結果。
それが私たちの行ったり来たり婚です。
夫が今年から住んでいる、妙高市の小局(こつぼね)という集落では9月の第1週目の日曜日に、集落の方、そして外部からもお客さんが集まるある行事があります。
その名も「産神様(さんがみさま)」
「産神様」とは、その名の通りお産の神様。
そしてこの案内板に書いてある「小局特有の珍しくておいしいおまつりです」という言葉……
こんなにそそられる行事、行かないわけにはいきません!
ということで、私としては初めてこの集落の行事に参加させていただきました。
「産神様」ってなに?
社に着くと……
そこには、並んで立てられたロウソクたちと、各家庭から持ち寄った自慢の一品たちが奉納されていました。
(諸岡家は初めての参加なので、今年は免除してもらいました)
実はこのロウソクがポイント!
祭り中に火が灯されているこのロウソク、一番短くなったものを妊婦さんが持って帰り、陣痛が始まったときに火を灯すと、そのロウソクが燃え尽きるときにお産が終わるという言い伝えがあるのです!
「この村で難産になった人はいねぇんだ」
「私も2時間くらいだったのよ〜」
集落の人たちは口々にそう教えてくれました。
そして私ももらったロウソクたちがコレ!
みじか!!
思ってたよりずっと短い!!
この時間でお産が終わったら、すごい楽だろうな〜(笑)
「こっちの方がみじけぇぞ」
「いや、もっと短いのもらってこい」
とお父さんたちが必死に短いロウソクを探してくれて、もうその気持ちがうれしかったです^^
「珍しくておいしいおまつり」の正体
また奉納されたごちそうたちは、集まった皆さんに振る舞われ…
お母さんたちがどんどんごちそうをよそってくれて、あっという間にこんなに!
めでたいことということで、お赤飯やぼた餅も多く、各家庭によっても色や味が異なっているのが興味深かったです。
そうこうしているうちに……
どんどん、どんどん盛られ……
あっという間に山盛りになってしまいました(笑)
「いっぱい食べて栄養つけて、元気な赤ちゃん産んでね!」
盛りに来てくれるお母さんたちから、たくさんのエールもいただきお腹も心もいっぱいです。
「おいしいおまつり」の意味がやっとわかりました(笑)
目に見えないものに祈る気持ち
実際、このおまつりには隣の市などからも妊婦さんがお参りに来るくらい有名なんだそうです。
私自身も集落でこのような神様を祀っているところは初めて聞いたので、とても新鮮でした。
それだけ、この集落では赤ちゃんが生まれること、赤ちゃんを産む女性のことを大事にしてきたのかな〜と感じます。
夫がこの集落に引っ越してきてすぐに赤ちゃんを授かったことも、なんだか運命的だなぁと。
お産というのは、もちろん他には変えられない喜びだと思うのですが、同時に
無事に出産できるのだろうか
陣痛ってどれくらい痛いのかな
怖いな
そんな気持ちで不安になることもあります。
今は医療も発達して安全なお産ができる状態がありますが、昔はきっと今よりも生まれてすぐ亡くなってしまうお子さんもたくさんいたと思います。
そしてお産はお母さんにとっても、命がけ。
この集落の人たちは、そんなどうしようもない不安や恐怖を、目に見えない神様に祈ることで乗り越えてきたのかなと感じました。
女性と子どもに対するまなざし
夫が住むこの小局という集落は、私の住む鹿渡新田と人口規模的には同じくらい(約12軒)
高齢化も激しく、集落の行事もほとんどないですし、私自身もここに来ることが少ないので、まだあまり地域の方にはお会いしていませんでした。
そんななかでも、こんなふうに見守っていただけることは、とてもありがたく心強いなぁとうれしくなりました。
子どもや女性という、歴史的に弱い存在だったものに対し、
集落だけでなく、外部の人たちも受け入れて、新しい命が生まれること、そして生み出す女性のことを大事にしてきたこの集落の歴史は、すごく尊いものだなと感じます。
もしよかったらぜひ、命を授かった際は小局の産神様に足を運んでみてはいかがでしょうか。
私も元気な赤ちゃんと夫と一緒に、早くお礼参りに行きたいです^^
■行ったり来たり婚の津南拠点「Classic Lab 柳の家」
家主が出産・育児のため、2019年12月〜休業中。Classic Labのブログは随時更新しています。
■行ったり来たり婚の妙高拠点「こつぼねの家」
現在改修中。2020年8月オープンを目指して「古民家ぐらしであそび、つながる家」として準備中。
諸岡 江美子
スノーデイズファーム(株)webディレクター/保育アドバイザー。1987年、千葉県船橋市生まれ。東京都内の認可保育園にて5年間勤務、その後新潟県妙高市にある国際自然環境アウトドア専門学校、自然保育専攻に社会人入学。津南町地域おこし協力隊を経て、現在はClassic Labとして独立。雪国の「あるもの、生かす」という生き方を研究している。編集者、エッセイスト。