シェアメイトがやってきた!〜「家族」を広げる可能性 妊婦編#9
2020.01.27
豪雪地・津南と豪雪地・妙高
どちらかを選ばなきゃいけないなんて、つまらない。
どちらも選びたいから、行ったり来たりする。
「二拠点居住」というライフスタイルへの憧れでもなく
ただただ、自分たちのしたい生き方を選びとってきた結果。
それが私たちの行ったり来たり婚です。
マタニティライフ編のはじめのコラムでも少し触れましたが、私たち夫婦は
「家族」という形が何も血縁関係だけではなく、もっと多様な人とのつながりでいいのではないか
と考えていました。
そんななか、柳の家にシェアメイトがやってくることになったのです。
私と同じ世代の彼女は、一昨年から地域で開催してきた移住体験ツアーに参加してくれていたリピーターで、この度津南町に移住したいということで私のところに連絡がきました。
地域の方も含めて相談した結果、他の空き家が見つかる春までの間は柳の家に住んでもらうことになったのです。
私も12〜3月は柳の家を空けてしまうことになるので、もしその間に家を使ってくれる方がいたらいいな〜と頭の隅で思いつつ、見ず知らずの誰でもいいというわけでもなかったので、元々関係のあった彼女に住んでもらえることは願ってもいないことでした。
想像よりもずっと楽しいルームシェア
彼女が引っ越してきたのは11月のはじめ。
私が12月に里帰りするまでの1ヶ月はルームシェアをすることになりました。
このルームシェアが、すごく楽しかったんです!
私自身ルームシェアは2度目ですが、始める前って楽しみもあるけれど、不安もあるんですよね。
でも彼女とは、きめ細かいルールを決めていたわけではないのですが、すごく居心地がよかったんです。
食事は作れる方が作って、一緒に食べれるときは食べるし、もう一人は自然と片付けをしたり。
私は妊娠8ヶ月になってお腹もだいぶ大きくなってきていたので、お風呂掃除などのやりにくい家事は率先してやってくれたり。
冬前の大豆の選別や雪囲い作業も一緒にやってくれたり。
集落の作業も出れない私の代わりに、夫と一緒に出てくれました。
なにより、誰かと一緒に食べるごはんはやっぱりおいしいし、妊娠後期になって誰かがいてくれる安心感というのもありました。
里帰り前の1ヶ月を、一緒に過ごせたことは、私にとってとてもありがたかったんです。
シェアすることで広がる可能性〜家も家族も子育ても、そして地域も
私たち夫婦が別々の拠点を持つということは、それぞれに家を守り、地域に所属するということでもありました。
みなさんが家族でやっていることを、それぞれ一人でやるということです。
でも、私たちは一人でできるとも思っていませんでした。
だって不可能ですよね?
若いうち、子どももいなければ頑張れば可能かもしれないけれど、いつか限界はきます。
では、どうするか?と考えたとき、私たちは「家族を広げる」という選択肢を結婚当初から持っていました。
血縁家族でなくても、同じ家、地域に住む仲間として「家」や「地域」を守っていく。
またそこに住んでいなくても、仲間として「家」や「地域」を守っていく。
そうして、私たちが二つの拠点を持っているように、たくさんの人たちが「自分の家」だけでなく、いくつも拠点を持ち行ったり来たりすることで、人口も減り持続不可能になってくる「家」や「地域」を守っていくことができるのではないか。
そんなふうに思っています。
これ、私たちは一人で住んでいるから問題が顕在化しますが、実はどの家でも言えることだと思います。
昔は多世代がここに暮らしていたから、お父さんが作業に出て、奥さんは婦人会、若手は青年会など役割分担して成り立っていたものが、今は各世帯の人数も減り、世帯数自体も減っていることで、一人ひとりへの負担も増えていると感じます。
(余談ですが、都会と呼ばれる私の地元では60歳越えた父が青年会長になったそうです……!)
若手の負担も大きくなっているなかで、「地域を、伝統を守れ」というのは少し乱暴なんじゃないかとも思うんです。
「地域を守る、伝統を守る」ために、何を大事にするのか、そのために諦めることや形を変えていくことが必要になってくるのではないでしょうか。
移住者にとっても必要なステップ
また、私たち夫婦もそれぞれ移住者なので経験があるのですが、移住に興味がある人にとって問題となっているのが「住む家が見つからない」ということです。
空き家ってあるけれど、実際に使っていいよと公になっている物件って、すごく少ないんです。
その理由は様々で
・仏壇があるから
・たまに帰ってくるから
・荷物が片付いていないから
特に妙高市や津南町では豪雪がゆえ、家の除雪に手間がかかる家はなかなか紹介できないんですね。
私たちは運よく、それぞれ素晴らしい古民家に出会えましたが、何年も家を探している人、結局見つからず他の地域へ移った人をたくさん知っています。
運よく家を見つけられた人に話を聞くと、大体は地域の人とのつながりで紹介してもらったり、見つけてもらったりしている人が圧倒的多数。自治体の空き家バンクなどで手に入れた人は稀です。
こう考えると、見ず知らずの土地に行ってみようかなと思うのって、すごくハードルが高いですよね。
だからこそ、本格的に家を探す前のステップとしてちょっと滞在できる場所があったら、移住者にとっては嬉しくないですか?
実際、移住ってまだ住んでもいないのに、人生全て持って「えいや」ってこれる人って少ないと思うんです。
住んでみて、やっていけそうだなって思うものですよね。
また地域とのつながりが何もないのに、飛び込んでいくことって地元の方とのズレを生みやすい気がします。
そんな点からも、ルームシェアを通して地域のことを知り、地域にもその人のことを知ってもらうって、実は移住のステップとしてとても大事なのではないでしょうか。
そう思うと、私たちにとっても、シェアメイトにとってもwin-winの関係で、そして地域にとってもwin-winの関係で可能性が広がっていくのが、ルームシェアなのかもしれないなぁと感じます。
■行ったり来たり婚の津南拠点「Classic Lab 柳の家」
家主が出産・育児のため、2019年12月〜休業中。Classic Labのブログは随時更新しています。
■行ったり来たり婚の妙高拠点「こつぼねの家」
諸岡 江美子
スノーデイズファーム(株)webディレクター/保育アドバイザー。1987年、千葉県船橋市生まれ。東京都内の認可保育園にて5年間勤務、その後新潟県妙高市にある国際自然環境アウトドア専門学校、自然保育専攻に社会人入学。津南町地域おこし協力隊を経て、現在はClassic Labとして独立。雪国の「あるもの、生かす」という生き方を研究している。編集者、エッセイスト。