雪の日舎
わくわく発見記

ベテラン母ちゃんたちのケチャップから、みんなで作るケチャップへ〜長野県栄村「おひさまケチャップ」

2018.12.04

ピカピカに晴れたお盆過ぎのある日、私は長野県の北部、新潟県との県境に位置する栄村の空の広い畑にいました。

この日は「おひさまケチャップ」に使うトマトの収穫日。

わたしは委託販売をさせていただく「おひさまケチャップ」ができるまでを知りたいと、トマト畑にお邪魔させていただいたのです。

ケチャップを作り始めた立ち上げメンバーの斉藤勝美さんと、若手メンバーの鑓水愛さんが今日の収穫メンバーでした。

 

 

 

 

 

もくもくと作業をするお二人を撮影させてもらっていると、数分おきに勝美さんがポケットから取り出した携帯電話で、誰かと話していることに気づきます。

 

「〇〇さん?×日なんだけど、どうだい?トマト潰そうと思うんだけど……」

「〇〇ちゃんかい?×日は来れる?」

 

 

勝美さんはひたすら次のトマトの工程を手伝ってもらえるメンバーにアポイントを取っていたのです。

 

その姿は、まるでバリバリ働くキャリアウーマンのよう。

 

ひっきりなしに電話をかけたり、かかってきたりするのです。

 

 

 

勝美さんが携帯電話で話す先にどんな景色があるのだろうか

この畑から始まる「おひさまケチャップ」の輪が、どんなふうに広がっているのか

そんなことを想像しただけで、わたし自身もとてもわくわくしてきました。

 

 

 

「勝美さん、誘い方がうまいのよ」

 

トマトの収穫から数日後、

そう、畑で斉藤さんがアポイントをとっていた日がやってきました。

 

この日は村営の加工所でトマトを煮て潰す作業です。

斉藤さんが電話で呼んだのは、昨年から本格的に製造に関わっている幸江(さちえ)さんと松子さん。そして勝美さんちのお嫁さんである裕美(ひろみ)さんでした。

 

休憩中には、みなさんにもお話を聞くことができました。

 

 

なぜ製造にかかわることになったんですか?

という私の質問に、幸江さんと松子さんはこう答えてくれました。

 

「勝美さん、誘うのがうまいのよ。はじめは、『ちょっとこれ手伝ってくんねかい』と言われて。いいよ〜って手伝っていたら、『じゃあ終わったら次はこっち……』と頼まれて。そうしたら、いつのまにか仲間に入ってしまっていたの」

 

 

「人の巻き込みかたがうまいのよね」

 

 

その言葉じりからは、困った感じにも聞こえますが、

そう話すみなさんからは、自然と笑みがこぼれていました。

 

 

そんな様子を勝美さんは、反論するでもなく

穏やかに見守っていました。

 

 

多くの出来事の始まりなんて、そんなものかもしれない。

でもその始まりが続いていくのは、勝美さんへの信頼感が土台としてあるのだろうと感じるひとときでした。

 

 

 

楽しむ姿が信頼感を生む

 

また、そんな話のなかでも、勝美さんは「新しいのも考えてるんだよ」とまだ試行段階のものがあると言うのです。

 

 

「秘密の畑があるんですよね」

とみなさんも、ふふふ、と笑います。

 

 

そういえば、トマト畑に伺ったときに、他にもズッキーニやニンニクも育てていること、

畑の場所によって、風の通り方が違うこと

様々な畑にまつわるお話をお聞きしたことを思い出しました。

 

 

まだ発表とまではいかないようですが、

興味のある方は

勝美さんの今後の展開にも期待です。

 

おひさまケチャップを次の世代に引き継ごうとしているにも関わらず、まだ他のわくわくも企んでいる。

 

 

そんな、いつも前を向いてチャレンジをしている、というよりは「楽しんでいる」勝美さんだからこそ、周りの皆さんも勝美さんを信頼し、一緒に活動をしているのだろうと感じました。

 

 

 

 

 

 

次世代に伝えたいものは、ありますか?

 

加工のプロセスはほとんど新メンバーが担当していましたが、それでもまだまだ気になる勝美さん。

様子を見てアドバイスをしたり、休憩の声かけをしたり、メンバーを気遣う様子がありました。

 

新しいメンバーが中心に加工作業をするなか、勝美さん自身は出来上がったトマト煮を運んだり、冷やしたりと裏方に回ってはメンバーの姿を目で追い見守っているのです。

 

 

いま全国各地でおいしいものの本来の価値が見直されています。ですが同時に、それらを繋げていく次世代をどう育てるかは課題となっているのではないでしょうか。

 

 

わたしは「おひさまケチャップ」ができるまでを見させていただいて、勝美さんがある意味潔く「おひさまケチャップ」を若手へと手放し、放ったらかしではなく自身は引いて見守る姿勢。そして自身は新しいわくわくへとチャレンジしていく。

 

その変化し続ける勝美さんの前向きな姿勢が、次世代が継いでいきたいと思うきっかけになっているのではないでしょうか。

 

そして、「おひさまケチャップ」をつないでいくことで、本当の意味で次世代へ伝えていきたいものとは、そういった変化を恐れずチャレンジしていく姿勢なのではないかな、と感じた取材でした。

 

 

 

 

■今回取材させていただいた母ちゃんたちがつくる絶品ケチャップ

スノーデイズファームで販売中です。

「保存料不使用だから、子どもも安心。野菜そのまんまの美味しさと母ちゃんたちの愛情」長野県栄村おひさまケチャップ

 

諸岡 江美子

諸岡 江美子

雪の日舎webディレクター/保育アドバイザー。1987年、千葉県船橋市生まれ。東京都内の認可保育園にて5年間勤務、その後新潟県妙高市にある国際自然環境アウトドア専門学校、自然保育専攻に社会人入学。津南町地域おこし協力隊を経て、現在はClassic Labとして独立。雪国の「あるもの、生かす」という生き方を研究している。編集者、エッセイスト。