雪の日舎
わくわく発見記

「みんなの手を渡って、自分の元に」還ってきた越後杉箸に込められる思い〜R4Yours 桑原亮さん/新潟県津南町

2019.06.02

現在スノーデイズファームで販売中の「越後杉箸」。

 

ECショップに掲載するにあたって、販売者であり、プロデューサーのR4Yours代表・桑原亮さんに商品のことやつくりはじめるきっかけについてお話を聞かせていただきました。

「なぜ寿司職人が、お箸で起業?」越後杉箸から始まる地域循環型ビジネス〜R4Yours 桑原亮さん/新潟県津南町

 

「僕には何もできません。関わっていただいている皆さんが、本当に素晴らしいんです。僕の力ではなく、おかげさまなんです」

 

そう何度も語る桑原さんのことばが印象に残り、越後杉箸にかかわる多種多様なみなさんにもお話を聞いてきました。

 

「ここでも夢は見れる」勇気をくれる越後杉箸〜デザイナー・Biko 滝沢萌子さん

 

「こんな働き方もアリなんだ」好きを仕事に〜ハンドメイド作家 花羽呼屋 石原綾乃さん

 

「デザインはおまかせします」信頼されているからこそ、チャレンジしたい〜デザイナー 藤木勉さん

 

「関わる工程がたくさんあるから、私にもできることがある」就労継続支援B型 つなん福祉会すみれ工房

 

 

それぞれお話を聞いていくと、もう一度桑原さんに聞いてみたいことがいくつか浮かんできました。

 

R4Yours とは

「民間の活力・実益こそが真の地方活性化に繋がる」と考え、民間の民間による民間の為の仕事作り、そのプロダクトとセラーの企画と具現化を目指す会社。
様々なジャンルの人間を結び付け、その能力を最大限に活かし、森林山地の環境保全、地域所得向上、地域にもっと貢献したいと考えてる方々(継続支援型施設の利用者・主婦・高齢者)との協業、特産品開発、次世代への地場産業作り、この5点を結びつけた「地域循環型ビジネス」を実現・推進することで「真の地方活性化とは何か」を考えることを目的としている。

R4Yours オフィシャルサイトより抜粋)

 

 

うちは会議はしません。

ーみなさんにお話を聞いていて共通していたのが、はじめに桑原さんから熱い思いを聞いて感動したということでした。

いや、恐縮です。ほとんどの方が初対面だったので、いきなり知らない人が押しかけて話をして、不安だったと思います。

 

ー全員が顔を合わせたのも、越後杉箸が出来上がってからの慰労会だったのですよね。

そうなんです。うちは会議をしたことがないんですよ。それまでは個々に連絡を取ったり、LINEでグループを作って進捗を確認しあったりでした。

 

ーそういったスタイルで越後杉箸を作ってきて、「こんな働き方もできるんだって思った」とみなさんおっしゃっていました。子どもがいても自分のペースで働くとか、一つの会社内で働くだけではないんだと。

そう言ってもらえると嬉しいです。別に一本の仕事で生きていくって法律で決まっているわけじゃないじゃないですか。複業やサイドビジネスだっていい。

 

僕はより関わる人が多いものをつくっていきたいなと思います。本業だけじゃなくても、関われることってあるじゃないですか。休みもあるし、仕事から帰ってきてからも家族と過ごした後、2、3時間あればできることもあります。実際に僕だったらやるなって思っていたんですよね。

 

みんな、すごいんですよ!って伝えたい

−これはデザイナーのお二人がおっしゃっていたのですが、「デザインはほぼお任せだった」と。そういう方は珍しいとおっしゃっていました。

そうですね。僕はお任せしました。デザインについては、僕は素人で彼らはプロなので、お任せした方がいいと思ったんです。

また、そのデザインがすごいんですよ。もうちょっとこうしてほしいとか、修正は全くしていないですね。

僕がデザインについて誰かに伝えるときは、彼らの言葉をそのまま伝えています。僕が変に脚色しなくていい。うちのデザイナーがこういう思いで作りましたって言うと、相手にはしっかり伝わります。伝えたいんです、「すごいんですよ、うちのデザイナー」って。

−桑原さんがお二人のことを信頼してお任せしていたからこそ、お二人もお任せされることは怖くもあり、そしてチャレンジしがいがあるともおっしゃっていました。

いやあ、そう言ってもらえるとありがたいです。

滝沢さんも、藤木さんもそうですし、縫製を担当してくれる石原さんも同じなんです。

実は小物の縫製をやってくれる方を地元で探していたのですが、なかなか見つからなかったんですね。津南町や十日町は着物の文化があるので着物関係の大きなサイズのものは仕事として受けてもらえても、小さいものを何個も同じように作るということが仕事としては難しくて、お断りされることも多かったんです。そんななか、石原さんにお受けいただき、いま9割くらいを一人で頑張ってもらっているんです。

 

何が言いたいのかというと、みなさんが誇りや自信を持ってできる仕事になればいいなと思って、この事業をやっています。

僕が考えている事業性だけにとどまる必要はなくて。

実際にそれぞれに、僕を通さない仕事も入っているんですよ。そうなってくると、彼らの仕事は津南町だから通用するのではなくて、他の地域でも、世界でも通用するものなんだって思えるようになりますよね。みんな素晴らしい力を持っているんですよ。

ただそういう場がなかっただけだと思うんです。本当に恐縮なのですが、そういうステージを僕でよかったら用意させてもらいたいなと思ってます。彼らの自信や仕事に繋がって、所得に繋がることが目標です。僕、この商品が売れることも嬉しいですけど、直でみんなに仕事が入るっていうことが、一番嬉しいですね。

 

みんなの思いが詰まった箸を手にして

−すみれ工房さんからも、いくつも工程がある作業をもらえて感謝しているとお話がありました。

以前ある就労支援施設に伺ったとき、利用者の方がすごく生き生きとされて、一つのことに集中していたり、自分の得意分野をやられているのを見たんです。これは絶対すみれ工房さんに越後杉箸のメンテナンスをやってもらいたいなと思っていました。箸のメンテナンスは、はじめに製材所から僕が教えてもらってきたんですけど、今じゃすみれ工房の皆さんの方が倍速いし正確なんですよ。

「俺がやらなきゃ」と思ってくださっている利用者の方がいたり、心身状態が良くなくて午前中で帰っていた利用者の方が「自分がやらなきゃ滞っちゃう」「この箸を待っている人がいるんだから」と思いはじめている、というお話を聞いて、すごくありがたいなって思いました。

 

いま、最後の袋詰めは僕がやっているんです。皆さんが作ったものを、自分が手にとって、袋に詰めて、発送する、感動しますよ。皆さんの思いが詰まったものが、いま自分の手の中にある、そして誰かに届くんだと思うと。

そこからまた、この人たちのために、よりいい仕事をしたいなって思うんですよね。

 

 

−きっかけを作ったのは桑原さんですが、その思いが様々な人を巡って、また桑原さんの手に還ってくるんですね。

そうですね。やってみることでもちろん課題も出てきたのですが、それもみんながアイデアを出し合ったり、個々の能力でより良い形にしてくれたり、そういった様々なやりとりも含めて、越後杉箸は僕の元に届くんです。

実は昨日も、新商品の打ち合わせをしたんですよ!

これもやってみて浮かんできた課題から生まれたものなんです。

 

−今回、越後杉箸に関わるみなさんのお話を聞いていて、代表の桑原さんの「わくわく」がみなさんにも伝染しているんだなぁと思っていましたが、実は桑原さん自身もみなさんから「わくわく」を受け取っているのだなぁと感じました。

新商品がどんなものなのか、今から楽しみです!

 

主人公は現場の皆さんです。

−いま新商品のお話がありましたが、R4Yoursのはじめの事業である「越後杉箸」のここまでと、今後展開を考えているR4Yoursの事業について、最後に桑原さんの思いを教えてください。

嘘偽りなく、 この箸の事業、 また、 これから始める事業の主役は現場の方々なんです。 所謂普通の法人と違い、 実際に携わる方々が主役で、 その方々の所得を増やす。 R4Yoursはそれを目的として、 僕が「夢物語かもしれない会社を私財を投じて作りたい」その信念だけで起ち上げた会社です。

そこに理解を示し、 チャレンジしてくれた 方々全てに感謝です。

売上高が少なくとも、 その地域やそこに住む方々、また消費者に 影響力のある事業、 今は種を撒き、 必ず花開けるようなモノ、 それを一つ一つ形にしていけたらな、 と強く思います。

 

−桑原さん、熱い思いを聞かせていただき、ありがとうございました。

 

 

 

自分の町に、わくわくが増えることは、単純に嬉しい!

「地域循環型ビジネス」

桑原さんはR4Yoursのビジネスのあり方をそう提示しています。

 

地域に資源を生かし,循環させること。

 

それだけではなく、関わる人たちの「わくわく」する気持ちをも循環させていく、それがR4Yoursのあり方なのではないかなと感じました。

 

なぜかというと、どの方にお話を聞いたときも、みなさんとても楽しそうだったからです。

「関わることが楽しい」

「もっといいものを作りたい」

そう語る気持ちの土台には、きっと心から楽しめるという状態があるんだろうと思います。

 

楽しんでいる人たちとともにいると、こちらも楽しくなる。

みなさんにお話を聞いているうちに、私自身もわくわくしてきました。

自分が暮らす町で、こんなわくわくすること、わくわくする人たちがいるってすごい!楽しい!

自分の周りでわくわくすることが増えるって、単純にうれしいんだなぁと思いました。

 

R4Yours、そして関わるみなさんそれぞれの今後を楽しみにしつつ、私たちも「わくわくする心」を忘れず進んでいきたいなと思います。

 

 

 

 

お話を聞いた人

桑原亮 R4Yours

新潟県津南町出身。学生時代は地方行政を学んでいたが、現在はUターンし、家業の「松海寿司」を継ぐ。寿司職人、飲食店経営者として実績を積むかたわらで、R4Yoursを立ち上げ、地域循環型ビジネスに取り組む。その第一弾の事業として、様々な方との協業を経て、「越後杉箸」を販売。2019年7月にはフランス・パリで行われるJapanExpoにも出店するなど、国内外から注目を集めている。

 

R4Yours

所在地 新潟県中魚沼郡津南町大字下船渡戊537-2(津南松海寿司内)
連絡先 025-765-4371

 

■R4Yoursが地域の力を結集してつくった「越後杉箸」はこちらからご購入いただけます。

大人用、子ども用、菜箸というラインナップでお届け中!

 

■滝沢さんのデザイン、石原さんが思いを込めて縫った箸袋もオススメです。スノーデイズファーム厳選の4種類でお届けしています。

諸岡 江美子

諸岡 江美子

スノーデイズファーム(株)webディレクター/保育アドバイザー。1987年、千葉県船橋市生まれ。東京都内の認可保育園にて5年間勤務、その後新潟県妙高市にある国際自然環境アウトドア専門学校、自然保育専攻に社会人入学。津南町地域おこし協力隊を経て、現在はClassic Labとして独立。雪国の「あるもの、生かす」という生き方を研究している。編集者、エッセイスト。