「こんな働き方もアリなんだ」好きを仕事に〜ハンドメイド作家 花羽呼屋 石原綾乃さん
2019.04.22
現在スノーデイズファームで販売中の「越後杉箸」。
ECショップに掲載するにあたって、販売者であり、プロデューサーのR4Yours代表・桑原亮さんに商品のことやつくりはじめるきっかけについてお話を聞かせていただきました。
桑原さん、実は本業は寿司職人。
津南町にある「松海寿司」を経営しています。
そんな桑原さんが繋ぎたかった、ちいさな町の魅力を詰め込んだのが、「越後杉箸」です。
R4Yours とは
「民間の活力・実益こそが真の地方活性化に繋がる」と考え、民間の民間による民間の為の仕事作り、そのプロダクトとセラーの企画と具現化を目指す会社。
様々なジャンルの人間を結び付け、その能力を最大限に活かし、森林山地の環境保全、地域所得向上、地域にもっと貢献したいと考えてる方々(継続支援型施設の利用者・主婦・高齢者)との協業、特産品開発、次世代への地場産業作り、この5点を結びつけた「地域循環型ビジネス」を実現・推進することで「真の地方活性化とは何か」を考えることを目的としている。
「僕には何もできません。関わっていただいている皆さんが、本当に素晴らしいんです。僕の力ではなく、おかげさまなんです」
お話の中で何度も何度も、そう語る桑原さん。
そんなふうに絶賛する皆さんが、どんな方なのか、どのように仕事をされているのか、とても気になってきます。
同時に、桑原さんから溢れ出るこの「わくわく感」の答えが、みなさんにお会いすることで見つかるのではないかという期待とともに、それぞれお話を聞かせていただくことになりました。
2番目にお話をお聞きしたのは、箸袋の縫製を担当しているハンドメイド作家の石原綾乃さんです。
「私でもできるんだ」
桑原さんと面識がなかったという石原さんも、知り合いの繋がりから声をかけてもらったと言います。
「私の先輩が亮くんの奥さんの友達だったんです。その先輩から『内職の人を探しているんだけど、やらない?』って誘われたのが始まりでした。亮くんの話を聞いて、面白そうだなって興味を持ちましたし、はじめはただ縫うだけ、内職のつもりで、関わり始めたんです」
そう笑顔で語る石原さん。
しかし実際に関わりはじめると、「ただ縫うだけ」とはいかなかったのです。
「実際に作ろうとすると、型紙と出来上がりのイメージが異なっていたんですよね。だから型紙を起こし直すところから関わらなきゃいけなくなっちゃって。
でも、私は縫製の勉強をしてきたわけではなくて、好きで作っているだけだったので、私がやっちゃっていいのかなって不安になったんですよね。
実は何度も亮くんに『私自信ないです、やめさせてもらいたい』って言っていたんです。でも亮くんは『こっちで責任は持つから、好きにやってみてもらっていいよ』って言ってくれて。
とはいえ、はじめの一個ができるまでは本当に私でいいのかな、できるかなって不安でした。
でも、実際にできてきて、生産が回り始めるようになったら、『私でもできることがあるんだ』って思えるようになったんです。
そうなったら、もっと綺麗にできるようにしようとか、意欲がさらに湧いてきたんです」
フルタイムじゃない、新しい働き方
また、石原さんは3歳のお子さんを育てるお母さんでもあります。日中はパートタイムで働いており、箸袋の縫製は子どもを見ながら、または子どもが寝静まった夜にやっています。
「箸袋の縫製は、自分のペースで家でできるから助かっています」
実は越後杉箸のチーム、全員が集まるミーティングはほとんどないそう。連絡は基本的にLINEでやりとりしているのです。
そんな仕事の仕方についても、子育て中の石原さんはこう話します。
「私は子どもも小さいのと、パートにも出ているのでLINEで連絡がくるといつでも見れるから助かります。自分のペースを崩さずに見れますし、他の人の進捗状況も逐一確認できるので、便利ですよね」
小さなお子さんを育てながらだと、決まった時間、フルタイムで仕事をすることが難しかったり、急な熱などに対応しなければならず、予定通りの仕事ができなかったり、既存の働き方の中では難しさが出てきてしまいます。
女性としては、自分のペースで仕事ができるということは、とてもありがたいことなのです。
そんなお話をしているなか、石原さんからはこんな本音がこぼれました。
「本当は、フルタイムの仕事にしなきゃなって思ってたんですね。今は半日パートに出て、家でハンドメイドや縫製をやっているんですけど。
一日外に出て働いていないっていうことに、後ろめたさを感じていたんです。
でも、今回越後杉箸に関わって、こういう働き方もアリなんだなって思えるようになったんです。外にでる仕事と、うちの中でできる仕事って、考えれば同じなんだなって気づきました。
どこかで、フルタイムで働いている女の人と比べたら、『私、ダメなのかな』って思っちゃうところがあったんです」
今では縫製のほとんどを石原さんが一人で担当しています。
先日も千個単位の注文に、「他にも縫製してくれる人を探さないと…」という桑原さんの言葉に
「私、やります!」と答えたという石原さん。
女性が子育てもしながら生き生きと暮らすためには、どんなスタイルでも活躍できる多様な場が必要です。
越後杉箸は、そんな多様な場の一つにすでになっているのだなぁと感じました。
また、石原さんの感じていた葛藤や、越後杉箸がつくる多様な場のお話は、私たちが「農ある暮らしとこそだて白書」でお話を聞いた、農業女性たちの事例とも重なる部分がありました。
農業に限らず、「働く女性」が自分らしく生きていくために共通することが多々あるということを改めて感じます。
「好き」より強いものはない。
内職といえど、箸袋の縫製だけでもかなりの仕事量になると思うのですが、石原さんは箸袋以外にも、さまざまなハンドメイド雑貨を作っています。
小さい頃から作るのが好きだったという石原さん。
おばあちゃんが編み物をよくしていたので、くっついて袋を作ったりしたのが始まりだと話してくれました。
それから、好きで作り続けていた石原さんは東京で手づくり市に行き、衝撃を受けたと言います。
「自分で作ったものを売っている人がいるんだ。かっこいい!って思いました」
それから徐々にイベントなどで販売をするようになったのです。
▲「花羽呼屋」という名前でイベントに出店。布雑貨を中心に、さまざまな種類の小物をつくっています。
「作ったものは、イベントに出かけていって販売しています。南魚沼市や十日町市、最近は津南町でも出店しています。
多い時期だと毎週出店してますね。イベント好きなんです」
そう楽しそうに話す石原さんに、
「それだけ出店するってことは、それまでに量作らないといけないじゃないですか」と聞くと、
「作るために売りにいってるって感じです」
とこれまた笑顔で答えてくれました。
「イベントに出ると、他の出展者さんとかお客さんとか、いろんな人とおしゃべりできるじゃないですか。普段関わらない人とお話することが多いので、そういうのが楽しいですね」
小さい頃から好きで続けてきたこと。
「好き」を突き詰めれば、それは仕事になり、人のため、地域のためにもなる。
そして自分自身の人生も彩り豊かになる。
前回の滝沢萌子さんのお話にもあったように、「ここで夢を見る」を石原さん自身が体現しているようで、お二人のお話が繋がり、それは次世代へのメッセージのようにも聞こえました。
お話を聞いた人
石原綾乃さん 花羽呼屋
新潟県津南町出身。現在はUターンし、パートタイムで働きつつ、ハンドメイド作家としても活動。津南町をはじめ、近隣の十日町市や南魚沼市で開催されるマルシェやイベントなどで販売している。
Facebook https://www.facebook.com/kabakoya/
■石原さんが縫製している「箸袋」はこちらから購入できます。
諸岡 江美子
スノーデイズファーム(株)webディレクター/保育アドバイザー。1987年、千葉県船橋市生まれ。東京都内の認可保育園にて5年間勤務、その後新潟県妙高市にある国際自然環境アウトドア専門学校、自然保育専攻に社会人入学。津南町地域おこし協力隊を経て、現在はClassic Labとして独立。雪国の「あるもの、生かす」という生き方を研究している。編集者、エッセイスト。
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