「ここでも夢は見れる」勇気をくれる越後杉箸〜デザイナー・Biko 滝沢萌子さん
2019.05.20
現在スノーデイズファームで販売中の「越後杉箸」。
ECショップに掲載するにあたって、販売者であり、プロデューサーのR4Yours代表・桑原亮さんに商品のことやつくりはじめるきっかけについてお話を聞かせていただきました。
桑原さん、実は本業は寿司職人。
津南町にある「松海寿司」を経営しています。
そんな桑原さんが繋ぎたかった、ちいさな町の魅力を詰め込んだのが、「越後杉箸」です。
R4Yours とは
「民間の活力・実益こそが真の地方活性化に繋がる」と考え、民間の民間による民間の為の仕事作り、そのプロダクトとセラーの企画と具現化を目指す会社。
様々なジャンルの人間を結び付け、その能力を最大限に活かし、森林山地の環境保全、地域所得向上、地域にもっと貢献したいと考えてる方々(継続支援型施設の利用者・主婦・高齢者)との協業、特産品開発、次世代への地場産業作り、この5点を結びつけた「地域循環型ビジネス」を実現・推進することで「真の地方活性化とは何か」を考えることを目的としている。(R4Yours オフィシャルサイトより抜粋)
「僕には何もできません。関わっていただいている皆さんが、本当に素晴らしいんです。僕の力ではなく、おかげさまなんです」
お話の中で何度も何度も、そう語る桑原さん。
そんなふうに絶賛する皆さんが、どんな方なのか、どのように仕事をされているのか、とても気になってきます。
同時に、桑原さんから溢れ出るこの「わくわく感」の答えが、みなさんにお会いすることで見つかるのではないかという期待とともに、それぞれお話を聞かせていただくことになりました。
まず初めにお話をお聞きしたのは、越後杉箸のロゴや箸袋のデザインを担当しているデザイナーの滝沢萌子さん(Biko)です。
津南町出身の滝沢さん。一度は東京に出て働いていました。現在は地元に戻り、お父様がやっていた看板屋さん(Biko)を引き継ぎ、デザインやイラストも作っています。
▲滝沢さんのつくった、津南町の方言キャラクター「ゆきだま君」
町のあちこちで登場する。方言ハンカチやLINEスタンプも好評。
▲ロゴ自体は杉の葉のイメージと箸のイメージと、それが重なっているイメージを混ぜて作った。「箸を通して、たくさんの人が繋がったらいいな、いろんな人の手に渡ったらいいなって思いを込めました」と滝沢さん。
「衝撃でした」
そんな滝沢さんが越後杉箸に関わるきっかけは、桑原さんからの声かけだったと言います。
「はじめにお話を聞いたときは、林業という自分の中では知らないゾーンだったので、それでビジネスや町おこしにつながるとか、加えて環境にもよいものになるというのが、衝撃的でした。
それを亮さんがやろうとしていることにまず単純に感動しましたね。なんか、すごいことが起ころうとしているなって。亮さんの行動自体に感動していたという感じでした」
なぜそんなにも、感動したのでしょうか?
お話を掘り下げていくと、人口が減っていく田舎の町の停滞感が私たちの考え方へも大きな影響を及ぼしていることもわかりました。
「ここまで本格的に世に出すとか、ビジネスにするという行動を取る人があんまりいなかったからだと思います。
津南のように田舎と言われる場所って、どこか諦めムードが漂うことがありませんか。
まさかこんなものが商売になるわけないっていう雰囲気があるんです。そんな中で、越後杉箸を作るっていうのがすごいなと思って、私も参加させていただきました。」
チャレンジすることで、見えた景色
実際に販売が始まると、じわじわと反響が広がっていった越後杉箸。
今では国内外問わず、問い合わせや注文が入るようになりました。
「この事業はきっと注目を浴びるのではと思ってはいたのですが、想像以上にわあっと広がった気がします。
自分でもいろいろな方がいいねって言ってくれるのを見ていると、嬉しいですね。想像しているよりもずっと、いいものができたっていうことを感じました」
そんな反響の中で、滝沢さん自身、仕事や地域に対する姿勢への心境の変化があったと言います。
「新しいことは挑戦していくべきだなって思いましたね。思っているだけじゃダメで、なんでもやってみることが大事なんだなって。1、2個やって失敗してもめげずにやらなきゃって思うようになりました。
それは、いろいろ考えて抜いて作ったものとか、関わっている人たちの仕事ぶりとか心意気に感動することが多かったので刺激を受けたのだと思います」
ここで、夢を見たい。
「私は以前東京に出て色々な刺激をもらいましたが、その分津南町に対してどこか諦めのような気持ちがあったのかも、と思わされました。
亮さんはじめ、関わっている皆さんが、リアルにあきらめないで挑戦している姿を見ていたので、出来上がって反響が出てきたときにはやったぞ!って思いにはなりましたね」
小さな町だからこそ、個人経営や家族経営も多い津南町。
だからこそ、小さな勇気が押しつぶされそうになってしまうことも多いのかもしれません。
ですが、越後杉箸のように、関わる人たちは個人だけれど、一つのプロジェクトチームとして関わり合うことで、刺激しあったり激励しあったりしながら、小さな勇気が大きな勇気になったのだなぁと感じます。
「実際にやってみるってパワーいるじゃないですか。いろんなアイデアを持っていても、実際にできないことの方が多いと思うんです。
でもこうやって少しずつ成功者が増えたり、頑張っている人がいるなって思えたら、自分もやってみようという気持ちになりますよね」
「やりたいこと頑張ってやる、夢を見るということが難しく感じてしまうことが、ここに住んでいると多くなるんですよね。
私自身も今回、亮さんや関わる皆さんと話していてとても刺激になったんです。めげてちゃいけないな、頑張っている人は頑張ってるなって思えたのは、勇気になりました」
この越後杉箸が持つ勇気に滝沢さんが励まされたように、周りの人たちにも広がっていくことを滝沢さん自身も望んでいるようでした。
人を大事にできる場所だから
また、津南という土地柄の良さについても、滝沢さんはこう話してくれました。
「人との繋がりが都会よりずっと濃いからこそ、すごく大切にできると思うんですよね。だからこそ、勉強になったり、人のありがたみを感じたりします。
今回のチームもそうですけれど、そういう人との繋がりの良さは津南町の強みなんじゃないかなと思います」
このスピード感と柔軟さ、これは人と人との繋がりが普段から濃い津南町だからこそ実現できたものなのかもしれません。
そして、これからも人と人との繋がりを大事にすることが、越後杉箸のようなわくわくするものを生むきっかけになるのでしょう。
滝沢萌子さん、ありがとうございました。
お話を聞いた人
滝沢萌子さん Biko
新潟県津南町出身。現在はUターンし、デザインやイラスト制作を生業にする。「越後杉箸」のロゴや箸袋デザインを担当し、そのほか町内外からもデザインの依頼を受けている。
所在地 新潟県中魚沼郡津南町大字下船渡戊1061-12
TEL 025-765-3777
■滝沢さんがデザインしている「越後杉箸」はこちらから購入できます。
諸岡 江美子
スノーデイズファーム(株)webディレクター/保育アドバイザー。1987年、千葉県船橋市生まれ。東京都内の認可保育園にて5年間勤務、その後新潟県妙高市にある国際自然環境アウトドア専門学校、自然保育専攻に社会人入学。津南町地域おこし協力隊を経て、現在はClassic Labとして独立。雪国の「あるもの、生かす」という生き方を研究している。編集者、エッセイスト。
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