雪の日舎
今日の佐藤の、かんがえごと

里帰り出産から、戻ってきました。死生観を学ぶ、豊かな出産経験を与えてくれた、ぼっこ助産院さんでの日々。

2019.09.13

こんにちは、佐藤です。

 

3ヶ月弱の里帰り出産期間を経て、
お盆明けに香川から、新潟に戻ってきました!

 

これは出発した5月22日の写真。お腹がおっきいのが懐かしいです…。
3ヶ月弱というのは、本当にあっという間なもんですね…。

実家のある高松は、人口約42万人。
人口5万人の十日町市に比べるとそれなりの都市なのかもしれませんが、ほどよい地方感の空気は似ていて、高松も中心部以外は穏やかな場所です。

 

さて今日は、里帰りして出産した「ぼっこ助産院」さんについて書こうと思います。

今回、第二子の出産はぼっこ助産院さんでしました。

 

助産院。

 

実はそれまで私自身、助産院とは縁のない人生だと思っていました。

 

十日町では「出産するのは、あっこか、ここか」といった少ない選択肢なので助産院の情報を聞くことがなく、助産院のよさをなにかの情報で耳にしたとしても、環境的に無理なのでそもそも選択肢としての助産院を諦めていました。
また大変申し訳なく、そして恥ずかしいことに
助産院は自然派、オーガニック、ナチュラルな暮らし…を強く志向している方の場所かなという先入観もありました。フリースタイル出産…私にはちょっと高度かも…なんて。

 

ところがですね、帰省前に母から「ぼっこ助産院が地域でとっても評判がいいよ」と聞き、しかもそこが実家から車で5分という最高の場所にあり、「それならば」とぼっこ助産院さんに即決。

 

1人目は一般的な病院でスタンダードな出産をしたから、
短い人生、出産できる経験も限られてるし、これも女性の特権!いろんなやり方を経験してみるのもありかな(^^)
しかし、そこはただの助産院ではなく、デイサービス、保育園、鍼灸院が一緒になった施設で多世代がいつも一つ屋根の下にいて、それだけでなく、行ってみるとそれはそれは最先端で、最高の場所だった!というのを書いていきます。

 

電話で、圧倒的な安心感を確信できる!

まず、スタートから違いました。
香川で出産を決めた際にネットで検索して「どこがええやろか〜」と見ていて
「えっ、食事が豪華!」「えっ、退院時にエステがあるの?!」という本筋とはちょっと違う部分ばかり目に入ってしまっていたのですが、気になるいくつかの産院に「この時期に出産、受け入れられますか?」と電話をした際に、電話口の対応が断然よかったのが、ぼっこさん。

 

どうよかったか?

 

まるで、親戚のおばちゃんに間違って電話をかけてしまったかしら?!と思うようなあったかい親近感と、懐かしい讃岐弁(讃岐弁は、やわらかい関西弁みたいなかんじ)に、もうその電話の雰囲気だけで、「ここで出産しても安心だ」感を確信できるほどでした。

 

その後、見学を経て、週1の検診が始まりました。

 

 

待ち時間なし、1時間みっちり、向き合ってくれる

検診はまず、待ち時間なしに足湯からスタート。
あったかい〜!

そもそも待ち時間なしって、すばらしい!

 

体をしっかり温めながら、どんなお産がしたいか、前回のお産のトラウマなど、いろんなお話をしたり、気になることを聞いたり…な時間でした。

1人目の出産で、「どんなふうに、赤ちゃんを迎えたいか」をちゃんと考える機会がなかったし、それを助産師さんとじっくり話すこともなかったので、とても新鮮でした。その中で「へその緒切るのはどうする?」「アロマ、音楽、持ち込みたいもの、助産師に求めることは?」などなどいろんな希望の有無について聞いてくださったのですが、その中で「胎盤見たいですか?」との質問が。

 

 

自分の身体の仕組みを知る機会

た、たいばん・・・。

 

 

ん?たいばん?

 

すみません、胎盤ってなんでしたっけ…

という、妊娠しておきながら、無知で恥ずかしい質問から始まった私。

そんな私に「えっ…そんなんも知らへんの?(笑)」って顔を全くせず、
赤ちゃんのできる仕組み、胎盤とあかちゃんとお母さんの繋がりなど、人体の仕組みなどを丁寧に教えてくださり、生命の奥深さをそこで知り、「ぜひ見てみたい!」ということになりました。

グロ苦手な夫くんはダメやろうなぁ
胎盤食べてみたいっていうママさんもいるんですよ、ふふふ。

この話だけでなく、
ただ赤ちゃんを産む場所というだけでなく、命について学ぶ機会を、検診のときにたくさんいただきました。
自分自身の身体の仕組みを知ることは、生きている自分に対する愛おしさや、緻密に設計された命への愛おしさにもなりました。不思議なものです。

 

 

「切る」と「切れた」は訳が違う。自分自身の「産む力」をどう引き出すか?に寄りそってくれた

また、前回の出産のときに会陰切開して、その傷が産後本当に辛くて辛くて、そして結構長い間円座クッションなしでは生きていけず、かなり気持ち的にも負担が大きかったのもあり、今回はなるべく切らずに…という思いがありました。

 

そのなかで、
「自分自身の産む力を引き出すには、どうしたらよいか?」という観点でいろんなお話をしてくれました。

まずはやっぱり、体を温めること。
ぼっこ助産院には、鍼灸院も併設されてて、資格を持った助産師さんが安産のお灸講座でも丁寧に教えてくれました。
それからは毎日お灸。

 

そしてそれを真似する娘。

お灸は、おもちゃのブロックで代用している娘。

毎晩、お母さんのお灸タイムに寄り添ってくれました(^^;)
その他、助産師さんたちからは会陰マッサージや、体操など、いろんなことを教わりました。
助産師さんたちのアドバイスは、ネットのいろんな情報よりも、一番信頼できるものでした。

 

 

 

産む力をいかに引き出すか、これは陣痛が始まったときもそうでした。

 

ずっと寄り添ってくれて、身体を温めてくれて、身体をさすってくれて、様子を見ながら「こうしてみるのどうだろう?」と的確な提案をしてくれ、陣痛含めた出産のコツ、みたいなものを教えていただいたようでした。

 

なんかよく分からずに、がむしゃらにいきむー!我慢するー!超絶痛い!トラウマ〜…といった前回の記憶とは、全く違うものでした。
1人目のときの無理矢理産ませる(しかも会陰切開。涙)、とは違ったせいか
驚くほどスムーズで、つるんと産まれてくれました。
「切った」のと「切れた」のでは訳が違うのか、あるいは産むまでの過程が良かったのか、前回よりも驚くほど身体の回復が早かったのも、驚きの1つでした。

 

高度に感じていたフリースタイル出産。でもいざとなると体は思うままに、求めるように動く。動物たちが本能的に産まれるように、無意識の中で、私も赤ちゃんも自分に合った形を知っているのかも…。(うーん、人体の不思議)。

 

 

夫も娘も一緒に過ごす入院期間

もうひとつよかったのが、産後、夫も娘も一緒に宿泊できたことです。

 

これはぼっこさんでは普通のことのようで
産院から会社へ出勤するパパさん、同じように入院している子同士で仲良くなるこどもたちも、よくある風景のようでした。

 

当の私も、里帰り出産なので

私が入院中、娘は実家で1人で過ごせるだろうか、夜寝れるだろうか…

と不安だったので、家族みんなで泊まれる、

 

しかも、赤ちゃんを産むお部屋で、そのまま赤ちゃんも一緒にそこで過ごす、というのを行なっているぼっこさんには感動でした。

娘や夫たちにとって、
どこからともなく、赤ちゃんがやってきた!というのではなく、
お産から赤ちゃんとの暮らしまでが地続きで、しかもその道理がわかる、というのはすごい経験だな、と感じました。

毎日、娘の城と化す部屋ではありましたが(^^;)

 

 

 

命をはぐくみかたを、教えてくれる

そんな娘も一緒な入院生活。

そもそも、里帰り出産により、娘にとっては慣れない家、香川の幼稚園に一時保育で通う日々、そして赤ちゃん(嫉妬の対象)。たくさんの初めてのことだらけで、戸惑ったり、欲求不満になったり、いろんな感情が去来する日々だったのでは、と日々様子をみながら感じました。

こ、これが赤ちゃん返りか…

 

ただでさえ、寝不足と授乳の痛さ辛さでボロボロな上に、長女の乱は結構きつく…。

 

そんな娘をどう受け止め、向き合っていくかも、入院の日々で助産師さんから助言いただいたり、助けていただいたりしました。私自身も、退院したとたん、産後のマタニティブルーやホルモンの変化による感情の起伏を経験しながら、急に2人のこどもに対する日々が始まるではなく、入院中から助けを借りながら向き合うことができたのは本当によかったです。

 

お母さんだって、急に母にはなれませぬよ。

 

そもそも、学校では教わることのない「赤ちゃんとの向き合い方」「きょうだいをもった上の子との向き合い方」「乳幼児の気持ち、仕組み、向き合い方や叱り方褒め方」などを、不安を抱えながら、自分の小さかった頃の経験をサンプルにスタートさせます。

 

そう、自分の経験をサンプルに。

 

これってちょっと怖いことだなと思いました。
適切な生育経験をしてこなかった大人が、親になったとき、子どもに対しても繰り返してしまう傾向がある、というのを「『育てにくい子』と感じたときに読む本」(主婦の友社)という、児童精神科医の佐々木正美さんの著書で書かれていました。
虐待だけでなく、自己肯定感が得られなかった子、適切な愛情を受けられなった子、干渉を受けすぎた子など、幼児期の体験がそれ以降の成長の過程でも克服されることなく、親になる人も多い。

 

 

子育てに正解はありません。だからあたまあるネット情報には翻弄されてしまい、逆に疲弊します。だからこそ、かけがえのない「私と赤ちゃん」のパターンと向き合ってくれる、助産師さんの存在はとても大きかったです。
夜、ふらっと部屋を出ると、助産師さんと入院中のママさんがお話ししている姿をよく見かけ、そんな雰囲気が「ああ、いいな」と思えました。

 

ちなみに、

夫や、うちの実母に対しても
「赤ちゃんの沐浴、練習してみますか?」と声をかけてくださり、「家に帰ったら一緒にがんばりましょう^^」と柔らかく指導してくれたのも、嬉しかったです!みんなで子育て、学んでいこう!という雰囲気がありがたかったです!

 

いでよ!おっぱいパワー!!母乳力を引き出すことにも、寄り添ってくれる

これは子育てに限らず、母乳育児への指導についてもそうでした。

 

かけがえのない私、というパターンに合う方法や助言、食事や楽に母乳を続けるコツやストレッチなどなどを、私の様子や変化を見て適切にその都度、指導してくれました。入院期間は、母乳特訓期間と言っても過言ではない!!
このおかげで、今の私があると思えるくらい!

 

助産師さんからは、「母乳外来で来られる方も多いのよ」と聞きました。

授乳って、慣れるまでは本当に痛いし辛いし、本当に辛い。(二度言った)
1人目のときは、切れてよくクリーム塗ってたなぁ…。
自分のおっぱい力を信じること、赤ちゃんとのコンビ力を向上させること、これは伴走してくれる人がいないと、本当に不安になります。

 

長女のときは、「夜はミルク」という指導が病院でされていたので、そういうものだと思い、退院後も母乳とミルクの混合で続けていたものの、徐々に自分のおっぱいが出てる気がしなくなり、あっという間にミルクのみになりました。

私って、母乳あまり出ない方なんだな(しょぼん)

と、勝手に思い込んでいました。
なので、実際に2人目で完全母乳でここまで来れていることが、自分でも驚いてます。

 

母乳のことを第一に考えた、栄養満点、たっぷりでおいしいごはん!!豪華で心のこもったお祝い膳!

まだまだ続きます。

 

なんたって、食事が最高!!
母乳のことを第一に考えた特別メニュー。
プラスチックの器じゃなくて、普通の食器で出るというだけでも、心が満たされる…。

 

まずは本当に驚いたお祝い膳!

どーん!

 

夫婦で絶叫(笑)

めで鯛!!

 

産院にとってはきっと毎日のことなんでしょうが、助産師さんたち、そしてちょうど研修に来ていた学生のみなさまの、心のこもったお祝いに感激しました…。産後、あれよあれよと過ぎゆき、踏ん張り、がむしゃらに過ごしてゆく日々の中、なんとしあわせなひとときだったことでしょう…。

 

そのほか、退院後の食事レシピの参考にしようと撮影したものたちを、おすそ分け。入院中の唯一の楽しみは食事になるのですが、その食事が地元の食材をたっぷり使い、味も見た目も素晴らしく、それだけで元気になれます…。

ちなみに、写真だとうまく伝わりませんが、ごはんはお茶碗一杯ではなく、どんぶり一杯ですからね!!!
でも、つるんと食べれちゃうんです!!

納豆とヨーグルトがつくのは、朝ごはんの定番。

 

娘ももりもりでした!

 

産声がプレゼント?!

さて、退院する日がやって来ました。
久しぶりの子守と、おっぱい特訓に、体力的にも気持ち的にも辛くなりそうなとき、いつも助産師さんや研修中の学生さんたちに支えていただき、天真爛漫・自由奔放な娘ともたくさん遊んでいただき、感謝の気持ちでいっぱい。

 

さて、退院後の赤ちゃんのお世話やこれからのことをレクチャーいただいたあと、素敵なプレゼントをいただきました。

 

じゃん。

 

実はですね、これ、ボタンを押すと、娘が産まれたときの産声が流れるんです!!!!

 

え〜〜〜〜!!!!

 

いつのまに録音してたのーーーー???!!!

 

もし自分が、そういったものを大きくなったときにもらったら、すっごい嬉しいな…。
きっと、場面によってはまわりからの「おめでとう」っていう声かけなんかも録音されてたりしてて。

 

大人になってから、自分を肯定できなかったときや、存在する意味を見出せなかったときに、ちゃんとこの世界に祝福とともに迎えられたことを再確認することができるのは、大きいと思いました。
素敵なプレゼントをもらったゆうひちゃんが、うらやましい…。

 

 

最後に。地域の死生観をつくる、命の生まれる場所

無事に退院し、産後2ヶ月が経ちました。
次女の1日のリズムも、私の授乳も安定してきて、赤ちゃんとの生活も軌道に乗ってきました。

ぼっこさんを訪れると、毎週のように全国各地の学生さんが研修に来ており、助産師さんたちも勉強熱心で、その空気感が心地よかったです。

ぼっこさんを立ち上げたメンバーの1人の眞鍋さんは
「病院を定年退職してから、ぼっこを作ってね。あのときは1日に何人も対応して、産ませ屋さんみたいだったけど、本当は一人一人のお産にちゃんと向き合いたかった」とおっしゃっていました。

 

それから、60歳を過ぎて立ち上げ、「当初からデイサービスと保育園の複合施設にしたいという構想があった」ということで、退職後はお弁当を持ってデイサービスの福祉施設へ勉強に行っていた話を聞くと、いくつになっても夢は叶えられるし、そうやって前に進んでいきたいと思えました。

そんな一人一人のお産にしっかり向き合ってくださるぼっこ助産院さん。
まだまだ書き足りない推しポイントはたくさんだったのですが、なによりも「誕生」という瞬間を、暮らしから切り離さず、安心感の中で家族みんなが迎えられる場として、助産院が死生観を作り上げている実感を大きく感じました。

 

地域で活動していると、耳タコなほど、少子高齢化の話題は尽きないのですが、豊かな「命のはじまり」を家族で迎え、豊かな「子育てのはじまり」を応援してくれる、ぼっこさんのような存在が、永遠に誕生を繰り返す社会を支えている。助産師、なんてすばらしい職業んだろう…。それに比べ、私自身の活動は、とてもちっぽけに思えました。

 

「妊娠・出産」はリクスが高いためか、なかなか助産院や、むしろ産婦人科さえ減っていっているのが現状です。
そんな中で、真摯にまっすぐ命に向き合う、ぼっこ助産院さんに、心動かされた数日間でした。
またここで、命を迎えたい、そう思える場所でした。

 


ぼっこ助産院
香川県高松市春日町1176「いのちの応援舎」

 

佐藤 可奈子

佐藤 可奈子

株式会社雪の日舎 代表。1987年、香川県高松市生まれ。立教大学法学部政治学科卒。大学卒業後、新潟県十日町市に移住、就農。「里山農業からこころ動く世界を」がテーマ。著書「きぼうしゅうらく〜 移住女子と里山ぐらし」