熱くて熱くて、熱すぎる!そんな彼の趣味は実は「交換読書」?その根っこにあるもの〜新潟県津南町十二の木 村山周平さん
2018.05.19
週のはじめ、お休みモードから仕事モードへ切り替える朝、なんだか憂鬱ですよね。また、産休中のママたちも家族が仕事や学校へ向かい、赤ちゃんとふたりの時間が始まると思うと、よし!と新たな気持ちで朝を迎えているのではないでしょうか。そんな少し緊張気味の週のはじめに、農業男子のはぐくみパワーをチャージして、心地よい1週間を始めませんか。
このコラムは、雪国で作物をはぐくむカッコイイ男性たちを、雪の日舎女性メンバーがキュンキュンしながら紹介していくシリーズです。あなたが食べているそのお米、野菜、お肉……どんな人がはぐくんでいるか、知っていますか?農業男子たちのはぐくみパワーは、あなたのはぐくむ暮らしをさらに豊かにしてくれるはずです。
新潟県津南町十二の木 村山周平さん(27)
住んでいるところ:新潟県津南町十二の木
作っているもの:米、雪下人参、アスパラガス、スイートコーン
キュンポイント:どんどんと前に進むパワーと、じっくり育む力を持ち合わせているところ。奥様をべた褒めしちゃう愛のあるところ
農業のことや暮らしのこと、聞いてみました。
―地元にUターンして、農業を始めたきっかけは?
大学生のころ、TPP問題が毎日ニュースで流れていたんです。そのときに、サークルの友達と農業の話をよくしていました。
俺は「うちが農家」だって言ったら、
「これからはアメリカの米が入ってくるから、日本の米なんて買わなくなって、米農家はこれからは衰退する。お前も考えたほうがいいよ」って言われてしまって。
「そうかなぁ」と疑問に思ったけど、その時は言い返せなかったんです。知識もなかったから。それが悔しくて。
ちっちゃい頃から手伝いしたりと、多少なりとも農業に携わってきたんです。
でも、一般の人からしたら農業は厳しいものなんだと思われていた。
自分の生まれ育ってきたものを全て否定されたような気持ちになって、だったら俺がやってやるかなぁって思ったんですよね。
ー農業の面白いところは?
うちの農業を自分が中心となって経営していくようになってから、米を地元の飲食店にも直接卸すようになりました。
それは自分でお店に足を運んで営業したのですが、昨年から2店舗で取り扱っていただいています。
そのお店のオーナーさんたちは、
「こないだお客さんが美味しいって喜んでいたよ」と教えてくれたり、
「頑張ってるな」と声をかけてくれたりするんです。
そうやって、ただ米を卸すだけではなく、農業を通して人とコミュニケーションが取れることが、自分は楽しいなと思いますね。
ーGHF(グリーンヒルファーマーズ)の会長をされているということですが、GHFとはどのような組織なのですか?また、参加された動機を教えてください。
GHFは4Hクラブ(*1)の十日町・津南版です。
4Hクラブというのは全国にあって、農家の若手が集まって勉強会をしたり、研究をすることで、それぞれの営農に役立てることを目的として活動している組織です。
40年以上の歴史があるのですが、意外と知らない人も多いんです。
俺は地元に帰ってきたら、まずGHFに入ろうと思っていました。帰ってきたときに、横の繋がりが欲しかったんです。仲間と情報が欲しい、そして勉強したい。そんな気持ちで入りました。
(*1)農業青年クラブ。将来の日本の農業を支える20~30代前半の若い農業者が中心となって組織され、農業経営をしていくうえでの身近な課題の解決方法を検討したり、より良い技術を検討するためのプロジェクト活動を中心に、消費者や他クラブとの交流、地域ボランティア活動を行っている。(農林水産省HPより引用)
一会長として、今後どんな活動をしていきたいですか?
GHFを通して、まずは人脈を広げることに主眼に置いています。
農家って人間関係が狭いんですよね。
ただ仕事しているだけだと、誰とも知り合いにならないし、社会経験も少ないと思うんです。
一方で、農業ほどコミュニケーション能力が必要な職業はないと思っています。何か作るにしても売るにしても、どこから種を買おうか、どこに売ろうか、自分で選んで営業しないといけない。機械を借りたかったら、同業者に貸してくださいってお願いしなければいけない。何をするにも人との繋がりが必要なんですよ。だから、知り合いがいっぱいできる場が欲しい。地元に帰ってきて農業を始めたときに、自分が欲しかった。だからやっているっていう思いが強いですね。
だから、まずは自分たちの中で、ネットワークができるのが第一。
そしてその仲間で、視察にいくことで全国の先輩との繋がりができる。その先輩とも将来的には、なにかあったら相談できる繋がりができたらいいですよね。
さらに県でも4Hクラブはあるので、そういう広範囲での繋がりができる。ネットワークを広げていく感じですね。若い人たちは特にネットワークは必要なので、そこに重きを置いて動いています。
なにより、若い人が地元に帰ってきて、まず飛び込む場所でありたい。
メンバーには農協の職員もいます。農に携わっている人であれば共通理解があるので、誰でもウェルカムなんですよ。
世代的には20代〜30代前半くらいですかね。
ー農業以外で楽しんでいることは?村山さんの農場のHPに「趣味:交換読書」と書いてあって気になりました(笑)
交換読書(笑)
そうそう、好きですね。
どういうことかと言うと、一人の人と同じ本を読むんです。
まずは、僕が1章を読む。そのときに、気になったところ、好きなフレーズとかわからないことがあったら調べて「こうだった」ってコメントを書き込むんです。
次は、相手が1章と2章を読みます。
1章を読むときには、俺のコメントを見て「私はこう思う」とコメントする。
2章は、今度は相手が先に読んで、思ったことを書くんです。
その繰り返し。
結構楽しいですよ。
−わかります!私も本に思ったこととか書いちゃいます!何年か後にその本を開くと、また面白いんですよね。
コメントを書き込んでおくと、その時の自分の記憶が蘇りますよね。
「あの頃はこう思っていたんだな」とか、「いまはこう思うな」とか、
自分も変化したり、成長したりしているのがわかりますよね。
ーいますごく共感できて、興奮しちゃいました(笑)でも私は誰かと交換したことはないですね。それも面白そう。
さらに誰かと一緒に楽しむことで、
自分には持っていない考え方を知ることができるんです。
「そういう考え方もあるんだ」という気づきもあるし、
その相手のことも深く理解できるんです。
まぁ、コミュニケーションの方法としては時間がかかりますけどね(笑)
僕は面白いからやっていますよ。
ーなるほど。私も今度やってみます!
ー好きな女性のタイプは?
華がある人かな。
ー昨年結婚された奥様も、華ありますよね!
そうなんですよ!
見ていて明るい気持ちになるんですよね。
ー新婚生活はどうですか?
楽しいです!
でも、いつも一緒にいるようになって、俺のだらしなさが出ちゃっていますね(笑)
日中農業して家に帰ると、そのまま座って寝てしまうことも多いみたいで、起こしてもらっています(笑)
また、今年新居を構える予定でいま準備を進めています。とても楽しみですね!
–最後にPRをどうぞ!
今うちは、本当にちっちゃい家族経営よりも若干ステップアップして、集落営農の入り口のようなことをやっている段階。俺と親父と、あと集落の人2人に農繁期を手伝ってもらっています。
今後は確実に今の倍の規模になっていくと思うと、みなさんの力をもっと借りなきゃいけないし、借りたいと思っています。そうなるといよいよ集落営農になるのかな。
さらに、ここ10〜20年で集落営農スタイルは衰退すると思っているんです。30年経つと、集落営農は消滅に近いと思います。
今の50代が引退してくると、20〜40代が主役になってきます。
でも、もう農業やる30〜40代っていないんですよ。俺のチームだと今50、60代がいて、その下が俺、20代しかいない。その頃には俺の上も下もいないかもしれない。
そうなると俺一人では不可能なので、株式会社化して、若い人を育成していかないと、維持すらできなくなる。
30年は遠い話のように聞こえるけど、きっとあっという間なんですよね。
30年間俺が何もしなかったら、この集落は衰退するか、大きな農業法人に吸収されるかになる。
だから俺が集落営農にランクアップして、その先に年間通して雇用するスタイルに持っていきたい。そうしないと、維持もできないし成長もできないと思うんです。
そして最終的には、子育てが終わったら、国道沿いにどんぶり屋さんを出す!
俺、どんぶり屋やりたくて!
自分のうちの米で、スタミナ丼を作りたいんです。にんにく醤油で豚肉絡めて、チーズとか卵乗っけて。俺が食べたいだけなんですけど(笑)
会社を任せられる若手を育てて、俺は店をやりたい。それが夢。
お店は、農業の仕事がなくなる冬場も、ずっとやっていられますしね。
ー村山さん、ありがとうございました。
【取材後記】
農業のお話も、交換読書のお話も、「仕事と趣味」という別々のカテゴリではありますが、お話を聞いていると、どちらも村山さんにとってのスタンスは同じなんだなと感じました。
「農業を通して、人とのコミュニケーションを取れることが楽しい」
「交換読書を通して、自分にはなかった考え方を知り、相手のことも深く理解できる」
どちらも、村山さんの視線の先には、「だれか」がいました。
以前より、村山さんの熱すぎる人柄から、どんどん新しい道を開拓していく様子がとてもエネルギッシュだなと感じてはいました。
ですが、実際にお話を聞いてみると、ただ熱くてエネルギッシュなだけではなく、勉強熱心であり、周りの人とも深いまなざしで理解し合おうとする誠実さがありました。
どんどんと前に進むパワー
そしてじっくり育む力
どちらも両輪で動かしていく大切さを、教えてもらったひとときでした。
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お話を聞いた人
村山周平さん ゆきやまと農場
(所在地)新潟県中魚沼郡津南町十二の木
(問い合わせ先)tel 025-765-1477
fax 025-755-5068
諸岡 江美子
スノーデイズファーム(株)webディレクター/保育アドバイザー。1987年、千葉県船橋市生まれ。東京都内の認可保育園にて5年間勤務、その後新潟県妙高市にある国際自然環境アウトドア専門学校、自然保育専攻に社会人入学。津南町地域おこし協力隊を経て、現在はClassic Labとして独立。雪国の「あるもの、生かす」という生き方を研究している。編集者、エッセイスト。