雪の日舎
旅する干し芋

第6話 干し芋もって、だれかのおうちへ〜干し芋だいすき女子会編

2019.02.04

半年は雪のなかの十日町。

この雪国のくらしのなかには、誰かのおうちに「お茶」しに行きあう文化があります。

 

「お土産」ということばが、「土から産まれる」と書くように、
土が産んだものが、ひとからひとへ渡り、雪の日に幸せを運びます。

小さな山の集落からお届けするこの干し芋が、「お茶のみ」の口実となり、そんなやさしい文化が続き、冬を越すひとたちの心をあたためますように。

 

 

 

 

改めて、私たちの「干し芋」に向き合ってきた、この特集。

第5話では、干し芋もって、お茶のみしながら、出稼ぎ時代のお話を聞かせていただきました。

続く第6話でも、干し芋もって、だれかのおうちに。今回は、いつも私たちの干し芋を味わってくださる「干し芋だいすき女子たち」のお茶飲みにお邪魔してきました。

 

 

この日私が訪ねたのは、十日町市在住の小川梓美さんと阿部奈月さん。

 

干し芋のどんなところが好きなのか、誰とどんな風に味わっているのか、お話を聞いてみました。

 

 

諸岡 今日は突然お邪魔して、すみません。お二人が私たちの干し芋をとても気に入ってくださっているとお聞きし、ぜひお話を伺いたいと思って、干し芋もってやってきちゃいました(笑)どうぞよろしくお願いいたします!

まず、お二人のご関係は?

 

小川  私は十日町で生まれ育って、高校を卒業して北関東の大学に行ったんです。その後は大学卒業とともに十日町に 戻ってきて、今に至ります。私たちが出会ったのは、私が高校生のとき。インターネットで知り合ったんです。かれこれ20年くらい前。なんならインターネットをつなぐときに、ピーヒョロロロロって言っていた時代(笑)

 

阿部 そうそう。電話線使うやつだよね。懐かしい。

私は十日町に住んで2年くらいになります。でも、小川さんとは20年来の友達なんですよ。十日町に来てからも、いろ いろな方を紹介してもらったり、十日町あるあるを教えてもらったり、あとこうやっておいしい干し芋を教えてもらっ たり。本当に頼りにしています。

小川 私が十日町にいる縁で、ちょこちょこ遊びに来てたんですよね。そしたら、ご飯が美味しいってなって……引っ 越して来ちゃったんです。

 

 

 

これが干し芋?

 

諸岡 干し芋を愛してくださっているお二人に、そのお気に入りの理由を聞きたいです。

 

阿部 これ、だって私の知っている干し芋じゃなかったもん。もともと好きなんですよ、干し芋。大好きなんですけど。これ食べたら、今まで食べていたのって、なんなんだって思う。

 

小川 干し芋を知ったきっかけは、やっぱりかなこさん。かなこさんは地元でも有名人で、いろいろなところで目にしていたので、「干し芋作ったんだ〜」って知って。食べてみたらこれじゃないですか。今までもっていた、トースターで焼いて食べるっていう干し芋のイメージと違った。「何これ?!美味しい!」と。阿部さんもそうですけど、私の周りの人たちは美味しいものには目がないので、「これ美味しいから食べてみて」って方々に持っていって、配って。私の周りでどんどんファンが増えていっています(笑)

 

阿部 今まで干し芋って、絶対炙って食べていたんですよ。炙らないときはゆっくり食べるとき。スルメのようにしゃぶって食べたり。だから干し芋って、そんなにぱくぱく食べるものっていうイメージではなかったんです。でもこの干し 芋は、一袋があっという間になくなる。こんな干し芋はないよね。

 

小川 気をつけて食べないとすぐなくなるんだよね。

 

 

 

 

気軽に手渡せる。ゆきのひみやげ

 

阿部  私は最近、干し芋をお土産にするようにしてます。 ちっちゃいサイズは、お土産とかちょっとしたプレゼントで持って行くと喜ばれるんですよ。今年もお歳暮に入れさせてもらいました。ちっちゃい子がいる友達とかに送ると喜ばれる。

そういう意味ではすごく手軽で。十日町の土産って日持ちするものがあまりないんですよね。美味しいものは外に持ち出せないっていう。よそに行って「はいお土産、いつでも食べてね」って言えるものがない。だから干し芋は重宝しています。今まで干し芋って好き嫌いがありそうなので、人にあげるってあまり考えたことなかったんですけど、これならさつまいも好きなら大丈夫だと思う。甘いし柔らかいから。

 

小川 あとね、パッケージが薄いっていうのがいい。レターパックとか、ちょっとした隙間に入れて送れる。

 

阿部 そうね。手軽さが嬉しい。

 

小川 別で箱を用意しないといけないものは、送る手間とか送料とか、ちょっと考えちゃうじゃないですか。

 

 

だれかを想う、そのかたわらに

 

諸岡 干し芋が生まれた背景として、鬱々とした冬にお茶のみに救われたという佐藤のストーリーがあるんですけど、 お二人は冬場って鬱々としますか?

 

阿部 私はそんなにしませんでした(笑)私2年間、市街地の車庫付きアパートに住んでいたので、雪かきを一切しな かったんですよね。雪に触らなければいけなかったのは、会社から帰るとき、車の雪を落とすくらいだった。会社行く から人にも会うし、友達とも会うし、一人で家にこもることはなかったので、鬱々とまではしなかったですね。

 

諸岡 お友達と会うときに、干し芋を持って行ったりしますか?

 

小川 私は子どもの同級生で集まるときとか、お子さんがいる家庭に遊びに行くときには、干し芋を持っていきます ね。それこそ小さい子がいても離乳食が始まっていれば、しゃぶっていられますから。

 

 

阿部 子どもにはいいよね。大人も一緒に食べられるし。あと私、かなこさんのお芋を使ったお菓子も好きで。干し芋アレンジもいいよね。

実は3月に結婚式をあげるんですけど、結婚式のドラジェに使いたいなぁと思っていて。

年末年始は夫の休みに合わせて私の実家にも行くんです。

 

 

小川 干し芋持って。

 

阿部  そう、干し芋持ってね。ほんと甘いなと思う。干し芋食べてるときに、こんなスイートポテト感を感じることなかった。

 

小川 よその干し芋買う気にならないよね。

 

 

諸岡 アレンジして食べたことはありますか?

 

阿部 私は炙ってみたこともあります。焼くのがいいのか、ちょっとあっためるのがいいのかとかやってみた結果、このままが一番好きだった。焦げ目があるのも美味しいんだけどね。結局そのままが一番美味しかった。

 

小川  手間かけずに、美味しいんだから、そのまま食べたいよね。

 

諸岡  それは干し芋としても、なによりうれしい感想です!ありがとうございます。

 

 

「楽しい」を運んでほしい。ここ十日町から

 

諸岡 最後に、スノーデイズファームへのメッセージ、要望などありましたら、お願いします。

 

小川  今のまま頑張ってほしいかな。メンバーが、楽しそうに仕事しててほしい。楽しそうにしてるのが、見てるこっちも一番いい。

 

阿部 そうそう楽しそうに仕事しててほしい。変な話だけど、そういう楽しく仕事してるって意外とないじゃないです か。もちろん内部は大変だとは思うんですけど、楽しそうに仕事していてほしいなっていうのはありますね。

 

小川 楽しい現場から出てきている芋なんだっていう、幸せ感の付加価値があるよね。この芋に。

 

 

阿部  かなこさんが、仲間や地域の人やお子さんと作ってますみたいなのはやっぱいい。そういう優しいイメージがあるのが、いいんだと思う。すごく。まぁ、そんなことを知らない人でも、もちろん美味しいんだけど。

 

小川  私以前に「女性の農業」がテーマの講演会みたいなものに行ったことがあって。同じく参加されていた男性の方が 「十日町の佐藤可奈子さんという女性が非常に頑張っている」って力説してくださって、「僕は彼女と面識はないし、 作ったものも食べたことはないけれど、とても頑張っているから国でもぜひ応援してほしい」っておっしゃっていて。 スノーデイズファームの取り組みって、きっとみんなが応援したくなるようなエネルギーを持っていて、そこから生ま れてきたものが、このとっても美味しい干し芋っていうのもいいんだと思うんですよね。

本当にメンバーの皆さんが、楽しく働いていて、その笑顔をいろんなところに広げようとしているじゃないですか。

 

阿部  本当に。農業も楽しそうだなって思うようになった。もちろん大変なこともいっぱいあるんだろうけど、いいこともすごくたくさんあるんだよって発信は大事だと思うし。続いてくれる人が出てくるには絶対に楽しさは必要だと思うんで。

そしてやっぱね、楽しそうに作ってたものは食べたい!なんなら十日町といえば干し芋くらい頑張ってほしい。冬にくれば干し芋を食べられるよって。 十日町にある土産群の中に食い込んでほしいですね。

 

諸岡  がんばります!力強いエール、ありがとうございました!

 

 

小川さんの手から、阿部さんの手へ。そして、周りの人へ。人から人へ、干し芋が旅立っていく。今回は、その旅の一 端を聞かせてもらいました。

それは「おいしい干し芋を届ける」というものづくりの原点と、「届ける私たちがたのしく、しあわせに」というスノー デイズファームのありかたを、改めて考えなおすきっかけになりました。

 

干し芋もって、だれかのおうちへ

 

私たちも、干し芋をおともに「お客さまの声を聴く」こと、大事にしていきたい。そんな関係をもつなぐ干し芋は、私 たちにとってもとても大切な「ゆきのひみやげ」と気づく訪問となりました。 小川さん、阿部さん、ありがとうございました!!

 

次はあなたのおうちへ、干し芋持ってお邪魔します!

 

 

 

 

 

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諸岡 江美子

諸岡 江美子

スノーデイズファーム(株)webディレクター/保育アドバイザー。1987年、千葉県船橋市生まれ。東京都内の認可保育園にて5年間勤務、その後新潟県妙高市にある国際自然環境アウトドア専門学校、自然保育専攻に社会人入学。津南町地域おこし協力隊を経て、現在はClassic Labとして独立。雪国の「あるもの、生かす」という生き方を研究している。編集者、エッセイスト。