雪の日舎
今日の佐藤の、かんがえごと

誰かのためにがんばれる、その「誰か」がくれる力

2017.10.14

「ママーっ!見て見てー!」と背中から声がした。

畑の草取りの最中、振り向くと、ちぎったさつまいもの葉っぱを鼻にくっつけて、娘がにんまりしていた。

「あっ」と葉っぱがはらりと落ちると、またちぎって、顔にくっつけようとする。
大切なさつまいもの葉っぱをちぎろうが、どうでもいいくらい元気が出た。

辛いことやしんどいことが続くと、去年の私はなにを考えていたんだろうと記録をさかのぼる。
去年の夏、「暮らしのなかに、仕事を添えたい」とメモ書きしていた。

なんだか最近、とても忙しかった。

季節に追いかけられ、追いつくのに一生懸命で、毎年上手にできない私が嫌いな私。
自分のこどもと山のなかで畑をしたり暮らしたりするのが夢だった私。
生き方を教え価値観を変えてくれた地域を、大切にしたい、繋げたいと思った大学生だった私。
良くも悪くも変わらない私がいた。でも、そんな私のそばにいつも誰かがいた。

信じてくれている師匠たちのために頑張ろう。
励ましてくれる人たちのために頑張ろう。
家で待ってくれる娘のために頑張ろう。
どんなにだめな私でも、家に帰れば、一応「母」にさせてくれる。

母であることが恥ずかしいくらい、外では叱られたり注意されながら反省し、時々「女のくせに」や「よそ者が」と言われることもありながら、また一歩を踏み出す。

私のお母さんは、どうやって頑張っていただろう。
誰かのために生きるから、明日も「行ってきます」ができるのかな。

「自分のために」は意外と限界がある。

友人は「こっちは人は多いけど関係は浅いから、この人のためにっていう存在や、そう思える繋がりは生まれにくいよ」と教えてくれたのだった。

佐藤 可奈子

佐藤 可奈子

株式会社雪の日舎 代表。1987年、香川県高松市生まれ。立教大学法学部政治学科卒。大学卒業後、新潟県十日町市に移住、就農。「里山農業からこころ動く世界を」がテーマ。著書「きぼうしゅうらく〜 移住女子と里山ぐらし」