雪の日舎
今日の佐藤の、かんがえごと

青山ファーマーズマーケット&国際女性会議に登壇した2日間で気づいたこと

2019.05.05

木々から舞い落ちる雪が、風にさらわれて、砂時計のように流れてゆく雪解けの春。
きめの細かい雪は、目に見えないほどに砕かれて舞うダイヤモンドのようにきらめきながら散り、

春の日差しはどこか柔和で、溶けゆく雪たちを反射させながら、山をあたためてゆく。3月下旬はまだ雪の残る十日町も、三寒四温、春の雪を降らせながら、土まみれになって顔を出すフキノトウを見つけると、芽吹きを待つ命たちの、春に向かうとてつもない引力を感じる。
 

 

いろんな悩みや、うまくいかないこと、たくさんあるけれど
春の引力に、私もひっぱられるように、
なんとか、なんとか、泥まみれになりながらでもいいから、土から顔を出したい、という気持ちが溢れてくる…。

 

なにかヒントや、きっかけや学びはないかと、
2人目の出産前というのもあり、安定期のうちにいろんなところに出かけるようになった。

 


3月は干し芋を持って、いろんなところにお邪魔させていただいたが、最終週の27、28日は、国際連合大学(UNU)前で毎週末開催されている、青山ファーマーズマーケットへ、そしてそのうち27日の午後は、第五回 国際女性会議WAW!/W20に登壇させていただいた。

 

お客様に、会いにいこう

2019年2月21日で、移住して9年目に突入した。
最初の1年はがむしゃらだった。
全身で集落の方々からの学びを吸収し、大自然の変化を浴び、毎日が楽しかった。
 
2、3年目で、農業研修をきっかけにスタンダードな農協出荷大規模農業を経験し
中山間地域での、私らしい農業のありかたに悩んだ。
 

 
それでも、3年目から小さく始めた干し芋が、生産者や作付け数を増やしながら大きくなっていった。
本数は百が千となり、万となり…
それに伴って、ハコモノや大きな資金が必要になってくる。
「行き先はやっぱり、大規模農業…」というジレンマにまた出会うことになった。
私だからできる役割ってなんだろう、と悩むようになった。

 

 

そんなとき、
今年の年初めに、昨年からご縁をいただきいろんなところでサポートしてくれている誉さんに
「なにか今年やってみたいこと、ありますか?」と、聞いたときに、

 


「青山ファーマーズマーケット、出たいです!」

 

と、にっと答えた。

そういえば独身の頃は、よく出張販売で東京に行っていたけれど
産後はめっきり行けなくなってしまったなぁ。
県外から十日町へ、人は訪れてくれていたけれど、私が外に出ることはあまりなくなってしまった。


(▲若かりし頃の出店)


ネットショップでやりとりしているお客様に会いたい。
いままでご縁があった人たちに会いたい。
今年の6月に2人目の出産を控えているからこそ、(そして娘がある程度自立してきた3歳になったからこそ)いまがチャンスかも!と、すぐに申請を出した。

 

つくるひと、食べるひとの息が合っている場所

ファーマーズマーケットは、やわらかなオーラに包まれた場所だった。
春の陽光もあり、力まず、心地いい。
他の出店者のみなさまも、審査を経てきた方たちなので、とても洗練され、そして生産に対する意識がとても高い。
一方、お客様も、積極的に農家さんとの関わりを持とうとし、同様に食べる側としての意識もとても高かった。
驚いたのは、外国のお客様の多さだった。

出店2日目から、英語表記を取り入れ、ぐっと外国のお客様が立ち止まってくれるようになり、会話が始まった。
娘はすぐコミュニケーションできるようで、英語は度胸だと思った(^^;)

 

試食をしていただくと、皆さまとても驚き、そして買ってくださり、
2日間で、追加で新潟から送ったものも含めて、すべて完売!!
最近、自己肯定感が地面にめりこむくらいに低くなっていた私にとって、とても大きな自信になった。。。

 

世界のテーマは「多様性」

一方、初日の午後はマーケットを数時間抜けさせていただいて、国際女性会議の会場へ向かった。

登壇させていただいたのは、パネルディスカッション「地方活性化と雇用創出、そのためのリーダーシップ」。

 

ご一緒させていただいたのは
片山さつき 内閣府特命担当大臣
大崎麻子さん 関西学院大学客員教授
アリス・グラハムさん 日本マイクロソフト株式会社執行役員政策渉外・法務本部長
中貝宗治 兵庫県豊岡市長
庄司健治さん 全国民生委員児童委員連合会副会長

 

といった、面々で、私の場違い感…(–;)ドキドキ。それはそれは緊張でした。
(当日のディスカッションの様子が動画で出てました。)

このディスカッションでの論点は

◆地方で雇用や仕事を生み出し、移住や起業を促すには?
◆若者や女性の新規就農者が増加しているが、なぜ?持続的な流れにするには?
◆地方が女性にとって暮らしやすい場所となるには?固定的性別役割分担意識や、男尊女卑の意識に対し中長期的にどうアプローチしてくか?

今回の会議、そしてファーマーズマーケットでのなんともいえない、潮流やうねりに、私には思考の洪水が起きた。。。

 

思考の洪水!

その思考の洪水のひとつに

「9年、ただただ根を張りがんばろうと右往左往している間に、世の中はすっかり変化している」という、桃太郎感覚があった。
外からボランティアや農業体験などで訪れてくれる人たちからの情報で感じていた世界と、彼らから聞いていた話を、リアルに体感した世界が、合致した瞬間だった!

 

よく関東圏には訪れていたけれど、それは出張販売という形ではなく、いただいた仕事をしに、あるいは会議に出席するためだったので、すこし受け身。 


そんな今までと違ったのは、少しだけですが世界に触れたことだった。
世界的な潮流、
日本で起きていることと、世界で起きていることの関連づけ、
海外の方々の反応や、響くポイント…。

 

そういえば、というほど昔ではないのだが、
学生の頃は、UNHCRユース(現・J-FUNユース/難民支援を行い、学ぶ学生団体)に入り、人道支援や難民支援の分野で学びを深めていた。
 

 
その頃はよく国連大学に通い詰め、そこでたくさんの仲間や尊敬する社会人の皆さまにお会いし、数え切れないほどの思い出がある場所が、国連大学だった。

 

毎週開催される、青山ファーマーズマーケットの開催場所は、国連大学前広場。
今回、出店という形で、またこの場所に来れたこと、
そして、ユースの時にさんざん参加した外務省主催のいろんなシンポジウムに、今回登壇する機会をいただけたこと。
不思議なご縁を感じられずにはいられなかった。


「ちいさななかに、宇宙を見るんです」

移住前、前の分校管理人だった籾山さんが、「ちいさななかに、宇宙を見るんです」と教えてくださった。

ちいさな農村のなかには、たくさんのものがいっぱいある、という意味だったと思う。この言葉はいまも私のなかに大切に残っているひとつであり、守っている教えの中のひとつ。

 

ローカルとグローバルはきっと繋がっていて、
グローバルな問題も、ローカルから始まり、
ローカルな問題も、グローバルな視点が解決してくれることもある。

 

その風通しを、常に持っていたいと気付かされた。

佐藤 可奈子

佐藤 可奈子

株式会社雪の日舎 代表。1987年、香川県高松市生まれ。立教大学法学部政治学科卒。大学卒業後、新潟県十日町市に移住、就農。「里山農業からこころ動く世界を」がテーマ。著書「きぼうしゅうらく〜 移住女子と里山ぐらし」