雪の日舎
はじめまして、雪の日舎です。

第1話 はじめまして、雪の日舎です。

2017.09.28

日本の農村を未来に。農園に集まった異業種6名チームで始まった、未来への挑戦。

はじめまして、雪の日舎(ゆきのひしゃ)代表の佐藤可奈子です

私自身は香川県で生まれ育ち大学で上京、20112月の大学卒業後に新潟県十日町市のやまあいの集落、池谷に移住し、農業をはじめて2017年で7年目となりました。

雪の池谷集落

雪の日舎は、多いときで3〜4m近く雪の積もる日本有数の豪雪地である、新潟県十日町市で生まれました。

私たちは、豪雪農業が生む、生き方や文化をつなぎ、はぐくむ喜びが手渡せる社会を作りたいという理念のもと、もの・ことづくりをしています。

なのでメンバーには、農家をはじめ、保育士、管理栄養士、建築士、そして未来の社会福祉士といった「はぐくみのプロ」が、地域を超えて横串連携をし、それぞれの専門性を活かし、会社が百姓のようになって活動しています。

雪の日舎フルメンバー

小さなはじまりは、出産を機に気づいた「農業×保育」の可能性

出産直後の赤ちゃんとお母さん

農業を通して農村の大切なものをつなごうと生産に携わっていた私が、自分だけの農園ではなく、あたらしく組織化し、雪の日舎を立ち上げようと思った小さなきっかけは、2015年冬。

当時は、山地に移住した女性で「移住女子」を結成し、都市の農村をつなぐフリーペーパー発刊や、全国移住女子サミットを開催していました。
その頃、里山で農業をするなかで聞く現場の声と、
都市で移住女子の活動をしながら聞く都市の女性たちの声、
双方が同じことを言っていることに気づきました。

それは、「はぐくむことへの不安」でした。

作物をはぐくむ、暮らしをはぐくむ、こどもをはぐくむ。
本来ははぐくむことは幸せなことであるはず。
双方をつなげたら、両方の方大が解決できるのでは、と思う頃、私は出産を迎えました。

そんな妊娠中、身体が弱りつつある夫のおじいちゃんがあることを教えてくれました。
「かなちゃん、大切にしてほしいことがあるんだ。お腹の赤ちゃんに声かけしてあげて。
いまのうちに、たのしいことをたくさん教えてあげて。
花がきれいだね、月がまるいね。そんなことでもいいんだよ」と。

そうか。この世界はこんなに楽しいもので溢れていて、お母さんは君が出逢うであろうこの世界のすばらしさを、教える役目なのだと、気づかされました。

それと同時に、まだまだ素敵な未来をつくっていくのが、私たち大人の役目なのだと思わされました。

 

娘の存在は、師匠の背中を追うことから、
追われる自分になったことに気づかされました。

くらし・農業・子育てが地続きなくらしが生む、農村の可能性

親子で畑仕事

産後からずっと、娘との生活は本当に楽しかったです。
けれど、それは「くらし・仕事・子育て」が地続きだからかもしれないと気づきました。

「こども1人育てるには、むら1つ必要」というアフリカのことざわがあるように、
私自身、子育てするなかで
「ここはみんなが親で、地域自体が保育園のようなもんだ」と話すむらの人たちに救われました。

逆に、都市の女性たちが言う生きづらさは、
くらし・仕事・子育てが分断しているからだとも気づきましたし、
農村の衰退を招いたもの、高度経済成長以降の人と仕事が農村から街へ移ったときに起きた分断だと思いました。

しかし、全てのはぐくみの現場である農村は、それらを地続きにできる力があります。

農村を、まるごとようちえんに見立てよう。
こどもの育ちに立ち会える働き方・暮らし方がしたい人に向けて価値を届けよう。
そしてまた、この山地をこどもたちのしあわせな声で、いっぱいにしよう。

それから、「農業×子育て・保育」の可能性を探り、私自身も出産、子育てをしながら構想は続き、2017年、やっと形となってスタートしました。

なぜ「雪の日舎」なのか

豪雪地で暮らす人

この豪雪地は、1年の半分近くは雪に埋もれます。
しかし、くらしの全ては雪に向かい、
雪の日が、他の全ての季節を輝かせ、
雪の日が、山や田畑に恵みを与えてくれます。
地域を丸呑みする雪の日を超えて、また春がやってくる。

それはまた、新しい自分にもなったようでもあります。
雪の日がもたらす、豊かな日々。
雪の日がつくる、生き方や文化。
雪の日がうむ、誰かを想う日々。

本当に消えるのだろうかと思わせるほどの豪雪も、春になれば土に染みこみ、山の血脈となり、雪解け水となって消えてしまいます。けれど、また冬になれば、恵みをもたらしにやって来ます。

 

自然は価値を繰り返します。

 

私たちは、この日本のかたすみの雪国の、さらに山奥の農村から、この場所が生む目に見えない価値を大切にし、夢を語れるこの小さな農村から未来をつむぎたいと思い、雪の日舎と名付けました。

農家になった移住女子

限界集落で暮らす人々

私たちのコンセプトは「はぐくみのそばに、里山じかんを」。

こどもをまんなかにした、しあわせなはぐくみのフィールドを農村につくることで、
農村の存続を目指します。

次からは、農村を未来につなぐために、具体的にどんなことをしていくのか、どんな世界を実現しようとしているのか、少しお堅い話になるかもしれませんが書かせていただきたいと思います。

佐藤 可奈子

佐藤 可奈子

株式会社雪の日舎 代表。1987年、香川県高松市生まれ。立教大学法学部政治学科卒。大学卒業後、新潟県十日町市に移住、就農。「里山農業からこころ動く世界を」がテーマ。著書「きぼうしゅうらく〜 移住女子と里山ぐらし」