雪の日舎
くらす、働く、子育てする、里山の女性たち

第2話 「季節保育園ってなに?」農家の暮らしに合わせたサポート〜水落静子さん/新潟県十日町市

2019.06.10

世代を超えて見えてきた、視点

「どうしたら、子育てしながら自分らしく働き続けることができるのだろうか」

そんな私たちの悩みからスタートしたこの特集。

 

第1話では雪の日舎の女性メンバーの座談会をお届けしました。その中でも、佐藤が小さな子どもを育てながら農業を続けていくにあたり、さまざまな壁や悩みにぶち当たったこと、いまもあり方を模索しながら働いていることをお話しました。

第2話からは、農業に携わる女性たちがどんな思いで、どんな工夫を凝らしながら、この雪国で農と子育てを両立してきたのか。

それぞれの年代別に聞いてみました。

 

今回お話を聞いたのは、「農業」に携わる女性でしたが、皆さんが共通してお話してくださったことからは、直接「農業」に関わっていなくても、どんなお母さんの心にも響く大事な視点だったなと感じています。

 

 

まずはすでに子育てもひと段落した、先輩お母さん世代に当時の女性の働き方と子育てのサポートについてお聞きしてきました。

 

はじめにお話を聞いたのは、十日町市に暮らす水落静子さん。

 

現在は十日町市の市議会議員としてもご活躍中の水落さん。

お話を聞いた頃はちょうど3年に一度の「越後妻有アートトリエンナーレ大地の芸術祭」の会期まっただなかでした。

 

約束の場所は、「うぶすなの家」

 

十日町市の中でも下条と呼ばれる魚沼市に近い地域。その中でもさらに車で山道を進んだ先にあります。

 

本当にこの先になにかあるの?

そう不安にもかられながらナビを頼りに車を走らせていると、前方には何台もの車が停められていました。

 

「こんな山奥に、人がいっぱい!」

 

なんだか少し異様な光景でもあり、不思議な気持ちになります。

 

茅葺の屋根が残る、ずっしりとした古民家の入り口を覗くと……

 

テキパキと働くお母さんたちの姿と、笑顔こぼれるお客さんたちのしあわせそうな顔、思わずこちらも「わあっ」と声をあげてしまいそうな楽しい雰囲気があふれていました。

 

 

 

「うぶすなの家」は3年に一度のアートトリエンナーレ大地の芸術祭の作品の一つで、芸術祭の中でも人気のメイン作品。

 

ここでは、地域のお母さんたちが郷土料理を振る舞うのが人気で、水落さんもその一人だったのです。

今回はそんな忙しいお仕事の合間に、お話を聞かせていただくことができました。

 

 

 

 

 

 

農家の暮らしに合ったサポート「季節保育園」

 

水落さんは嫁いでからは、外に勤めに出ながら農業の手伝いをしていたと言います。

またそのお仕事というのが、とても興味深いお仕事でした。

 

「私がこちらに嫁に来てから仕事につかせてもらったのが、東下組(ひがししもぐみ)季節保育園というところでした。朝8時半から16時まで、農業ができる時期だけの保育園だったんだけど、その頃は近くに工場もあってそこで冬も働いている人がいたので、冬も見てもらえればってことで1年中やっていたの。

自分の子も連れて行って、働いていたんです」

 

▲季節保育園があった場所。入り口の木がアーチ状になっていて、まるで園の門のよう。そのころもこうして子どもたちを見守ってきたのだろうか。

 

そんな保育園があったんだ!と興味しんしんな私たち。

 

というのも、農業は緩急が激しく、天候にも左右されがちな職業。

 

現代の一般的な保育園の枠の中では、曜日や時間帯など噛み合わないもどかしさを、佐藤や知り合いの農家さんからよく聞いていたからです。

 

実は昔のほうが、地域の実情に合ったサポートがなされていたのかもしれません。

 

全く同じ形ではなくても、「季節保育園」からヒントになることがありそうな気がします。

 

 

まるで、森のようちえん?

 

「地域にあった、生活改善センターというところで保育していたんです。

地域の人たちにブランコをつけてもらったり、ジャングルジムも置いてもらったり。

遊具だけではなく、自然でもたくさん遊びましたよ。山菜採りとかもちびっ子たちと一緒に行っていました」

 

▲いまも残っている遊具たち。近所の子どもたちが遊びに来ているのか、遊具を使った気配が感じられた。

 

なんて、たのしそう!

 

このお話を聞いたとき、以前取材させていただいた上越市の森のようちえん「てくてく」さんの日常を思い出しました。

 

 

 

地域の方と一緒につくる保育園、そして地域の資源を存分に生かして遊ぶ、その中からはたくさんの感性がはぐくまれていったのではないかと想像できます。

 

そういった取り組みは、いまだけでなく、この地域には昔からはぐくまれていたのだなぁと思うと、とても心強くなりました。

 

 

家族や地域の人に支えられて

▲季節保育園のある場所から、水落さんのご自宅までの道。くねくねと山あいを走ります。

 

「手伝えるときは家の農業も手伝っていたんですよ。稲刈りが始まった頃は、16時に保育園の子どもが帰って。あとは日が落ちるまで、1時間くらいしかないんだけど。

義父が今度は牛にえさやったりしなくちゃいけないから、バトンタッチして私が稲刈りを手伝っていたの。そのときは義母が子どもを見てくれていましたね。夕飯の準備を家でしながら」

 

そう話す水落さんですが、職場の保育園でもお子さんと一緒だったということは、ご自身のお子さんと一緒にいる時間が長かったということですよね?と聞くと、水落さんは意外な答えを返してくれました。

 

「そうですね。でも、実は土日は市民活動に勤しんでいたんですよ。子どもは、ばあちゃんに預けて行ってましたね。

一緒に住んでいたから、自分は好き勝手してて、ばあちゃんによく面倒見てもらっていたなと思っているんです。

妹夫婦とか実家の父母にもいっぱい助けてもらいました」

 

 

いまだからわかる、地域密着だからできたこと

 

そんな水落さん、地域でご自身も子育て中のなか、周りの子どもたちも預かるという仕事柄の悩みはなかったのでしょうか?

 

「もう一人の先生と話してたから、よかったのかもしれませんね。

地域密着の保育園だったので、悩みも、言えないこともあったけど、みんなでワイワイ相談したり年上の人たちに教えてもらったり、そういうことが大事だったって今は思っていますよ。当時は悩みもいっぱいあったんだろうけどね」

 

水落さんは笑顔でそう言いました。

 

そして、そのとなりでは、同じようにうぶすなの家で働くお母さんが笑顔でうなづいていました。

 

「誰かしら、腹を割って話せる人はいたわよね」

そう顔を見合わせて笑うおふたり。

 

いま、こうして「うぶすなの家」が地域のお母さんたちに支えられて、訪れた人たちを笑顔にしているのは、きっと昔からお母さんたちが悩んだり、苦労しながらも、寄り合い、助け合って子育てをし農業をし、この地域をつないできたからなんだろうと感じるひとときでした。

 

お話を、ここ「うぶすなの家」で聴けてよかった。

今度はお母さんたちのつくる、お昼ごはんをゆっくり食べに来よう、そう思いました。

 

 

子育ても、仕事も、暮らしも、全部がうまくいっている人なんていない。

その人なりの苦労や悩みを抱えながらも、日々生きている。

 

そんななかで支えとなってくれるのは、同じように悩んでいる同世代のお母さんだったり、少し先輩の助言だったりする。

 

「うぶすなの家」で生き生きと働くお母さんたちのやりとりを見ていて、より実感しました。

 

私たちのモヤモヤした悩みも、こうやっていろんな世代の女性にお話を聞くことできっと見えてくるものがあるんだ、そう背中を押してもらい、わくわくする特集のスタートを切ることができました。

 

水落さん、ありがとうございました!

 

 

お話を聞いた人

水落静子さん

昭和34年、新潟県十日町市に生まれる。結婚後は自身も4人のお子さんを育てながら、「季節保育園」で働く。また家では農業の手伝いもしていた。現在は十日町市議会議員としても活動。3年に一度のアートトリエンナーレ大地の芸術祭では、「うぶすなの家」にて地域の料理をお客様に振る舞う。

 

 

 

■水落さんをはじめ、県内のママ農家20~80代のみなさまにどんな子育て農業をしてきたか、どんな「くらし・しごと・こそだて」のブレンドをしてきたか、聞き取りやアンケート調査を実施し、白書にまとめました!

農あるくらしと、こそだて白書(ゆきのひノート特別編)「くらし・しごと・こそだてをどうブレンドして、私らしいしあわせ作れる?」

 

諸岡 江美子

諸岡 江美子

スノーデイズファーム(株)webディレクター/保育アドバイザー。1987年、千葉県船橋市生まれ。東京都内の認可保育園にて5年間勤務、その後新潟県妙高市にある国際自然環境アウトドア専門学校、自然保育専攻に社会人入学。津南町地域おこし協力隊を経て、現在はClassic Labとして独立。雪国の「あるもの、生かす」という生き方を研究している。編集者、エッセイスト。