雪の日舎
くらす、働く、子育てする、里山の女性たち

第12話 共感、変化、小さな一歩……農業女子たちのインタビューを終えて、雪の日舎女子のつぶやき

2019.12.13

たくさんの農家女性にお話を聞いてきたこの特集。

私たちもたくさんの気づきと問いをいただきました。

特集の最後は、みなさんのお話を踏まえて、わたしたちの感じたこと、これからのことについて、佐藤と諸岡がざっくばらんにつぶやきます。

ぜひお茶を飲みながら読んでいただき、みなさんからもご感想をいただけたらうれしいです^^

 

 

 

「そうそう、わかる!」共感できる場の必要性

話し手:佐藤

 

諸岡 農家女性たちへのインタビューを通して得た気づき、自分自身の今後に向けての心境の変化はありましたか。

 

佐藤 同じような悩みを持っているんだなって共感しました。

あとはみなさん、上手に自分のバランスをとって、納得した上で実践して組み立ててやっているんだなって。一農家としてすごいな。わたし全然うまくやれてないかもって思いました。

もう一つ印象的だったのは、新海さんのお話。一度アイデンティティをなくして、そこから今の環境でどうやって自分らしさを作っていくのか、そして農業女子がフィットした暮らしを作るお手伝いをしたいって新しい動きも見えてきているところがすごく共感できましたね。

女性の人生って、そのいっとき、点で見たら辛かったり変化に対して凹むときもあるけど、揺らいでうつろっていくんだな、それでいいんだなって思えたのもわたしの心境的には大きかったです。

えみちゃんはどうでした?

 

話し手:えみこ

 

諸岡 今回お話を聞いた方はどの世代の方も、おおらかに構えてる感じがしました。今だからそう言えるのかもしれないけれど。子育ても仕事も現役世代の30代の方たちも、子どもが生まれて仕事ができない期間もあったけれど、変化にしなやかにやっているんだなってことがわかりました。

それぞれ大変だったことや悩みを聞いていると、「前回取材した〇〇さんも同じこと言っていました」っていうことがすごく多くて。「やっぱり、みんなそうなんだね」って話になるんですよ。

そうやって、お互いに話をすることが大事なのかなって実感しました。こういうことを発信していくとか、新海さんたちみたいに動いていくことが、女性の心強さにつながっていくんだなって。

 

 

佐藤 「ああそうだよね」って共感できる場があったらいいんでしょうかね。実際はこういうもんだと思ってやっていくしかなかったりするんですよね。

意外と、体験で外から人がくるとか交流の取り組みは聞かれるけど、農業をしている女子同士で集まるっていうのは少ないんだなって気づきました。

そういえば昨日たまたま農業女子たちと話をして、すごい楽しかったんですよね。「こういうこと言われてさ!」とか、そういう話ですけど。

ほっとしましたね。

もうちょっとゆったり構えて自分の変化を楽しんでみようかなって思えました。

この特集を始めた頃は、「どうしよう、どうしよう」って不満の方が大きかったんです。「みんなどうしてんの、ほんまに」って、周りが見えない苦しさがありました。

 

諸岡 農業女子同士では話す場がないんでしょうか?

 

里山オープンカレッジでの農業女子トーク

▲農家女性たちのお話をまとめた「農あるくらしと、こそだて白書」の報告も兼ねた、農家女性たちのトークイベントの様子

 

佐藤 ほとんどないですね。そもそも、産後なかなか外に出なくなるし。忙しかったっていうのもありました。自分のことでいっぱいいっぱいで。農業している女子たちと、ちょっとお茶飲もうよって誘えるような余裕がなかったですね。

独身の頃は、ご飯屋さんに行っておしゃべりしたり、お茶のみとかもしていて、そこでいろんな話ができたんですけど、結婚してからは一気に減りました。この特集きっかけに復活した感じです。お互い、忙しい間に色々あったねって。

 

諸岡 そう思うと新海さんがやっていた「新米お嫁ちゃん会」って大事なんだなって思いますよね。「そうなんだよね、わかるわかる」って言える場所が必要で。

あと、新海さんがおっしゃって いたのは、行政の名前を借りてやるということ。「〇〇で呼ばれているから、行ってきます」って言うことが、家から出るのに大事ですよね。

 

佐藤 それすごく大事!友達とご飯行くとは言えないんですよね。

それに、そういう会って、例えば集落の嫁会とは違うんですよね。以前「移住女子」のコラムで栄村の吉田さんもおっしゃっていましたけど、子育ての話しかしないんじゃなくて、子ども以外の話もできるコミュニティっていうのはいいなって。

子ども以外の話、自分がこうしたいっていう仕事の話もできる場ってなかったなって思うんです。

 

 

 

 

 

子育てはしたい暮らしの一部

佐藤と娘

佐藤 「子育てに専念したら」っていうのは的外れなんだなって。暮らしって仕事も子育ても含んだもの。点だけの子育てだけってなんか違うんです。そこをうまく組み立てられるといいんですけどね。

 

諸岡 「子育てに専念したら」って言われると丸投げされてる気がするじゃないですか。

自分だって、産後はあまり仕事もできないし、外出れないってわかっている、産前みたいにバリバリ仕事だけしたいわけじゃないのに、それを「子育てに専念したら」って言われるのは違和感があります。

だって、自分のいろんな暮らしの中の一つに、子育てがあるじゃないですか。それだけ取り除かれた感じを受けるんですよね。

 

佐藤 そうなんです。「子育て」という小さな部屋に閉じ込められる感じ。

 

 

本質はそのままに、変化していく美しさを見つめたい

話し手:かなこ

佐藤 新海さんの行く末は気になりますね。先日、女は40代からが働き盛りっていう記事を見たんです。同じ40代で比べたとき、男性よりも女性の方が意欲が高いんだとか。まさに新海さんたちってその世代に突入するのかなと思いました。

 

諸岡 子どもの成長とかもあるでしょうね。小学生になって、ある程度手が離れたりとか。やっぱり新しくなにかを始めている女性を見ると、その世代が多いような気がします。

 

佐藤 雪の日舎って、「変化」とか「うつろう」、「揺らぐ」とかそうゆうのがテーマなのかなって思いました。

今までずっと、農業や地域の大切なものを繋ぎたいって思ってやってきたけれど、それって変化はするけど本質は変わっていないものであって。

私自身、しなやかに変化していくことへの羨望みたいなものがあるのかなって最近感じています。

だから子どもにも「ゆうひ」と名付けて。夕日のように、変化するどの瞬間も美しいってことを大事にしたいって思った。

野菜にも「はしり」と「なごり」があるんですよね。市場では変わらないことが求められるけれど、本当は時期によっても年によっても変化する。それが自然だし、その変化が実は私たちの感性や心を動かしてくれるんです。

変化に対して「わぁっ」て思うこと。そうゆうものをちゃんと見つめていきたいなって。

 

諸岡 こどもおやつを考えるときにもそういう話しましたよね。

 

佐藤 そうなんです。だから「こどもおやつ憲章」は、私たちの羅針盤になっていくと思います。

話し手:えみこ

 

諸岡 以前、スローフードのお話を聞いたときも、イタリアのある町では、農産物は年によって味が違うっていうことを、お店とか提供側がしっかりと発信しているから、買う側も理解して買ってくれる、その変化をも楽しむまちづくりができていると言っていました。

 

佐藤 そうそう。ワインは年によっての違いをたしなむ文化があるけど、他の農産物ってそうゆう文化ないですよね。

ちょっと味が変わると怒られる。「おいしくない」って、おいしくないじゃなくて、味の違いなんだけれど、それがうまく伝えられていないんですよね。

メディアとして伝える人の生き方も、販売する商品も、本質は変わらないけどその人なり、そのものなりに美しく変化しているよ、そうゆう変化もするよねってことを伝えられたらいいのかなと思います。

以前、こどもおやつで相談に乗っていただいていた6次産業化プランナーの椎葉さんにも言われたことですが、まだ完成していなくても、途中である自分たちのこと、商品のことも、素直にありのままに届けて行くことって、大事なんでしょうね。

そのためにも忙しすぎるのってよくないですね。あった出来事に対して、考えて書くってことができない。インプットアウトプットのリズムを維持しないといけないなぁと最近思います。

 

 

暮らしに合わせて、仕事も子育ても小さな一歩を踏み出すきっかけを

話し手:かなこ

佐藤 自分たちのしたい暮らしに合わせて仕事を考えていいんだって、改めて思いました。

先日農家の女性と、子育て中だったママさんが子どもが寝ている間にハンドメイドとか手仕事して販売しているよねって話になって。それに比べて私たちのやっている農業ってハードルがあって。例えば子どもが寝ている間に、台所で加工品作ろうかっていうのができないんです。アウトプットする選択肢が少ないのかもしれない。

だから、みんなで使えるような加工所があるといいよねって話していました。

 

諸岡 ちょっと気軽に使える加工所があるといいですよね。

 

佐藤 リスクを負うという点でも、女性が自分で来年も再来年もずっとそのリスクを負い続けられるかって、結構難しいことで。産休中ってどうする?とか考えると、大きなチャレンジはしづらいですよね。それこそ加工はお母ちゃん達は得意な分野だけれども、一歩が踏み出しづらい。

 

諸岡 そう考えると、おひさまケチャップを作っている、栄村の村営の加工所はいいですよね。ちいさい規模でも、なんとかできるようにっていう雰囲気を感じます。

 

 

そういう小さな一歩を踏み出すきっかけとなるような場が増えるといいなぁと思います。

新海さんの活動もきっとその一つですし、嶋村さんたちのナカラネもそう。雪の日舎も、そういった場となるように自分たちのペースで歩んでいきたいですね。

 

雪の日舎女性メンバー(佐藤/諸岡)

 

 

 

 

■農家女性たちのインタビューから見えてくる、「わたしらしいしあわせ」のつくりかたとは?
十日町市の子育て世代へのアンケートと農家女性たちへの聞き取りから、「農あるくらしと、こそだて」についてまとめました。

諸岡 江美子

諸岡 江美子

スノーデイズファーム(株)webディレクター/保育アドバイザー。1987年、千葉県船橋市生まれ。東京都内の認可保育園にて5年間勤務、その後新潟県妙高市にある国際自然環境アウトドア専門学校、自然保育専攻に社会人入学。津南町地域おこし協力隊を経て、現在はClassic Labとして独立。雪国の「あるもの、生かす」という生き方を研究している。編集者、エッセイスト。

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