雪の日舎
くらす、働く、子育てする、里山の女性たち

第1話「子育ても仕事も、どっちも充実させたい。それってわがまま?」〜ある日の雪の日舎女子会

2019.06.07

時をさかのぼること、約1年前。

2018年9月13日

この日は雪の日舎が法人化した私たちにとって特別な日。

登記も済ませた夜、フルメンバーで決起集会をしました。メンバーの家族も大集合!

 

そんななかで出てきた会話から、今回の特集は始まります。

いつものように、女子トークに花が咲く女子メンバーたち。雪の日舎の女子メンバーは、それぞれ子どもを抱えていたり、夫婦で別居生活をしていたり、年齢もライフステージもバラバラです。だからこそ、それぞれのライフステージで迷うことが、段階ごとに表面化して見えます。そんななかから、さまざまな疑問が浮かんできたのです。

 

メンバー紹介

右手前から

ますがたみき

結婚歴 10年。

子ども 小学校2年生の息子と5歳の娘を持つ。

仕事  長男を出産するときに仕事をやめ、子育てに専念。昨年度、娘が3歳になる年に保育園に預け、フリーの管理栄養士として少しずつ仕事を始める。

 

佐藤可奈子

結婚歴 4年。

子ども 3歳の娘がいる。

仕事  2歳までは義父母に娘を見てもらったり、一緒に畑や田んぼに連れていきながら農業をしていた。2018年より、保育園に預けて農業をしている。

 

諸岡江美子

結婚歴 2年。夫とは別々の拠点を持ち、行ったり来たりの結婚生活を送る。

子ども なし。夫婦ともに元保育士でもあり、そろそろ子どもも欲しいと思っている。

仕事  現在は民泊運営、ワークショップ開催などをしている。

 

 

 

出産して感じた生きづらさ。仕事と暮らしの分断から。

諸岡  わたしは結婚してから2年経つんですけど、そろそろ子どもが欲しいな〜と思う反面、仕事も独立してスタートしたばかりなので実際に妊娠・出産となったとき、どうバランスをとっていくかという不安もあります。そのあたり、一番最近出産を経験しているかなちゃんはどうでしたか。

 

佐藤  そうですね。わたしの場合は娘を妊娠したときから、農業が続けられなくなったんですよね〜。「誰が農業するの?産後はどうするの?」って。

しかも、結婚して引っ越したことで、通い農業になっていたので、生活の中に仕事があるのとはちょっと違くなったということもあって。それが、すごく生きづらいなと思うようになっていました。

 

諸岡  「生活の中に仕事がある」という感覚は、いまのわたしも同じですね。いつが仕事の日で、休みはいつかって概念がないです。いつも暮らしでもあり、仕事でもある感じ。その感覚は、子どもができても続けていきたいなって気持ちがあります。

かなちゃんは実際には、産前産後はどのように農業をしていたんでしたっけ?

 

 

佐藤  産前は完全に夫に兼業農家してもらっていました。夫には頑張ってもらいましたね。でも、稲刈りシーズンになると両立の忙しさがピークになって、夫も体調崩しちゃったんです。やっぱり無理があったんでしょうね

 

 

産後は夫のお父さんお母さんに娘を見てもらいながら、畑にも連れていきながらっていうのをしていました。ちょうど産後半年間は冬だったので、授乳しながら発送作業とかほしいもの販売とかはできたので、クリアできたかなと。

ただ、完全に稲刈り時期に出産したので、夫には悪かったな〜と今でも思っています。憔悴しきっていたので。

産後は割とすぐ働いた感じ。そこはよかったです。

 

▲事務所仕事のときは、夫がおんぶすることも

 

諸岡 なるほど。幸治さん、憔悴しきっていたんですね…。でもそれだけ覚悟を持って夫としてやってくれるって、心強い!

まぁ、そういう思いから始まって、現実はいろいろと思い通りにいかないこともあったりすると思うんですが、そういういろんなことをとっぱらって、かなちゃんがこうしたいという理想ってありますか?

 

 

佐藤 そうですね。実は宿の営業を去年初めてやって、主婦力を発揮するときというか、地域での宿業こそ暮らす力と質がお金に換金される仕事だなって感じました。
しかもあまり時間に制限がないので、例えば次の昼までに掃除が終わればいいんですよね。さらに、娘が一緒でもできる仕事でした。むしろ娘がいた方がお客様に楽しんでもらえたりして。だからここでの生き方や子育てがそのまま仕事に繋がったり、子どもが楽しそうに農村で育つ中で一緒に働いたり、そういうのをおばあちゃんになるまでできたらいいなって思います。

もしかしたら年取るごとにまた考えが変わっていくかもしれないですけどね(笑)

 

諸岡 そうですね。去年の夏は農業に加えて宿業もということで、実際はてんてこ舞いだったと思いますけど、やってみたことで見えてきたことがあったというのはかなちゃんにとっても、雪の日舎にとっても大事な気づきだったような気がします。

わたし自身も、民泊の運営を始めて思うのは、自分の暮らしかたそのものが宿の世界観になるということですね。仕事がうまく行っていないときや、来てもらいたいお客さんに来てもらえないときは、仕事のやり方というよりも暮らしの質を見直そうと最近思うようになりました。

 

先輩世代はどうしていたのか?ヒントが欲しい

佐藤 よく子育てしていると、昔の人は子どもを背負って働いていたとか、周りの人が見ながら農村の中で子どもと暮らしていたという話を聞いて。でも今は全然違うんですよね。子育ても、暮らしも仕事も分断している中で、どういうやり方が一番あっているんだろうって模索しているんです。


だから先輩世代の人がどういう工夫をしてこの時期を過ごしていたのか、どういう人と
の関わりをして暮らしていたのか、家族とか地域とか、今に活かせる部分があるのか、あるいは今はなくなってしまったあり方があるのか知りたいですね。

あとは好奇心として、同じ世代の農業している人がどんな子育てと農業をしているのかを知りたいです。農業も狭い世界なので、周りの人がどうしているのかわからないんです。本来子育てって楽しいもののはずだと思うんです。それをどうやったら、楽しくやっているのか、コツがあるなら知りたいなと思います。

 

諸岡  そうですね。そう考えると先輩世代のお話の中にかなりヒントがありそうですよね。そのあたり、じっくり聞けたらいいな〜。

 

心地いい暮らしかたと働きかたは人それぞれ違う。その人自身が納得していることが大事。

 

諸岡  みきさんは、出産した時に一回仕事をやめたんですよね。その点ではかなちゃんとはちょっと違う思いがあったりするのかなと思うのですが、どうですか?

 

ますがた わたしは働いているとき、仕事以外のプライベートの時間というのがほとんどなかったんです。このまま出産したら、仕事の隙間でなんとか子育てするんだろうなというイメージでした。

私はもともと、子どもが生まれたらしっかり向き合いたいという気持ちがあったので、仕事はすっぱりと辞めました。

主人も、私が子育て中心となる暮らし方に賛成してくれました。
また、その経験が今後再就職するときに活かせるんだろうな、というところまで考えていたので、その時はがっつり子育てしようと思っていました。

 

諸岡 なるほど。それだけはっきりしていたんですね。

実際に子育てに専念する中で、悩んだことはありますか?

 

 

ますがた 自分で望んで仕事をやめ、子育てに専念したのに、時々なぜか世の中から取り残された感じがありました。子育ても家事も大きな仕事なのに、「いいのかな、こんなことしてて。」と稼いでいないことが悪いような、複雑な気持ちになるんです。


でもそれ以上に、子ども
といる濃密な時間は、仕事では味わえない充実感や幸福感があり、他に替えられないなと思っていました。3歳までは子育てに専念しようと決めていて、今振り返っても、長男の子育てに関しては後悔は全くないです。


長女は3歳になる前に預けて働いた分、もっと一緒に散歩したり、一緒にお菓子作ったり、抱っこしてあげたかったという思いはあります。でも逆に、家ではできないことを園で楽しく身に付けていることを知り、そういう子育てもいいのかもしれないと思うようになりました。

 

諸岡  「後悔はない」と言い切れるってすごいですね。そう言い切れる人ってそうそういない気がします。

それに、それが一般的にではなく、自分が納得していることが大事だと思うんです。みきさんはきっとそうだから。みきさんの子どもに生まれたら、幸せだろうな〜(笑)

 

佐藤 うんうん。いつも楽しそうというか。一緒にお料理したりする姿がいいなって思います。そういうの、やりたい。

 

 

 

子育てと仕事のバランス、どうとっていく?

 

諸岡 わたしも子どもは可能な限り自分で見たいという気持ちがあって。でも暮らしを優先できる働き方がしたいから、やっぱり融通のきく自営業がしっくりきていて。でもある程度収入も得ないといけないし、自分自身の充実感もほしい。

そういう点では、いまのみきさんの段階ってすごく興味があるんです。実際にフリーで仕事を始めてから、いま子育てと仕事のはざまで悩んでいることはありますか?

 

ますがた 子どもとの時間が一気に短くなりましたね。家に帰ってくるとそこから家事がスタートして、ちょっとした隙間で子どもが「ママあれ聞いて、これ聞いて」って言うのを、手を動かしながら聞いていることが多くて。


子育てしながら仕事するフリーランスの仕事を望んでいたのに、自分で仕事のやりくりをしなければならず、仕事の方に重点を置いてしまうことが増えてしまって。
私は多分、仕事メインで子育てするよりも、まだ子育てメインにしたくて、プラス空き時間に仕事したいという思いが強いんだと思いました。そのバランスが取れていないときは、すごく辛く感じます。

 

アスパラ肉巻き5

 

諸岡 そのバランスの取り方って、きっと難しいですよね。始めたばかりだからこそ頑張りたいという気持ちと、譲れないものを守っていくというブレない覚悟と。

さっきかなちゃんにも聞きましたが、みきさんの理想の子育てと働き方はどんなイメージですか?

 

ますがた 子育てを仕事に生かせたらいいなと思っています。かなこさんが「子育ても仕事も地続きで」という言い方をされていましたけど、それってやっぱり素敵だなと思うんです。いまの私の経験が、同じように悩むお母さんたちのヒントになればいいと思っています。

例えば、こういうお惣菜を作っておいたら次の日すごく楽だったとか、子どもにこういう幼児食作ったら喜んだとか。

私自身が子育て中だからこそ、自分の生活をそのまま誰かと共有し、良くも悪くも悩んでいる人のヒントになることができたらいいのかなって。子育ても仕事も同時に楽しめる働き方がしたいなあと思ってます。まだまだそれが難しくもあるんですが(笑)

 

 

 

女子トークは尽きませんが、今日はこの辺で。

私たちに共通していることは「仕事と暮らし、子育てを地続きにしたい」ということ。

それは特に佐藤と同じように農業をしている女性に特有のあり方なのかもしれません。

特集第2話からは、私たちの不安と疑問をさまざまなライフステージの女性にお話を聞くことで、ヒントを探っていきたいなと思います。

また「仕事と暮らし、子育てを地続きに」という考え方は、実はこの雪国の変化が多い環境だからこその暮らしかた、働きかた(複業や出稼ぎ)そのものなのではないだろうか。

 

そのあたりも先輩女性のお話から探っていきたいと思います。

 

 

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◆農あるくらしと、子育て白書
20~ 80代、農村で子育てをしながら農業をしてきた女性の皆さまに、生き方のヒントを学びました。

諸岡 江美子

諸岡 江美子

スノーデイズファーム(株)webディレクター/保育アドバイザー。1987年、千葉県船橋市生まれ。東京都内の認可保育園にて5年間勤務、その後新潟県妙高市にある国際自然環境アウトドア専門学校、自然保育専攻に社会人入学。津南町地域おこし協力隊を経て、現在はClassic Labとして独立。雪国の「あるもの、生かす」という生き方を研究している。編集者、エッセイスト。

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